屍は師なり

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この言葉を教えてくださったのは元慈恵会医科大学、加藤征教授です。今から30年近く前に私自身、治療法に行き詰まり何から手をつけていいか分からないときに師匠から、「物事を極めるには原書から」と教えて戴き、自分の仕事の原書は解剖だと気がつき、東京中の医学部に電話をして解剖を勉強させて欲しいとお願いしましたが、ことごとく断られました。最後にたまたま慈恵会医科大学にすがるように電話をしたときに、「う~ん、勉強ね。世の中には奇特な方がいるもんだと、ま、勉強したいというなら兎に角いらっしゃい。」と言って頂き、すっ飛んでいったときに対応してくださったのが、加藤教授でした。事情を話すと教授はすぐに、「白衣に着替えてください。これからお見せします。」と言って下さり、解剖実習をして下さいました。あまりの突然のことにこちらはビックリしてその後、「当校は解剖見学を受け入れています。そこの参加なら許可します。」と言って頂き、通算7年、700時間ほど勉強させて頂きました。解剖見学の前には少し教授から、「これから皆さんが解剖見学をするこのご遺体は生前、恋もし、喜びも悲しみもあり病気や寿命で人生を終わられた方です。以前、ご遺体を献体する方が『屍は師なり』と言う言葉を残しました。死んでも尚、皆様の役に立ちたいという気持ちです。献体者に心から感謝をし、本日は勉強して下さい。」と説明を受けます。とても印象に残っている言葉です。その加藤教授も先日逝去され、その悲しみは癒えませんが、この先生のおかげで今の自分の治療法が確立され、その後目に見えない物まで治療の枠を拡げることが出来ました。加藤教授のご配慮がなければとてもここまでは来られませんでした。心からご冥福をお祈りすると共に、この言葉や教えて戴いた内容を後世に伝えたいと心に刻みました。

2019年3月26日 | カテゴリー : 症例 | 投稿者 : 東洋鍼灸院 田中