いつまでも残る古傷

年配の方を治療していると古傷をこちらが発見することがある。
5年ぐらい前までは35年前の古傷を治療していた人が一番だった。
20才の時にアキレス腱を痛めて55才で坐骨神経痛の治療をしていた。
ところがあるおばちゃんがあっさりその記録を抜いた。
85才で通院していたおばあちゃんは、20才で農家に嫁にいき腰を痛めた。
当時のことだから舅・姑の目もあり治療など十分受けられない。
腰を痛めたまま時間だけ過ぎた。
初めは膝が辛いということで治療を開始したが、段々良くなると昔の腰痛が出てきたという。
65年ぶりに昔の腰痛を感じたという。
これを見て古傷はほぼ一生残るんだということがわかった。
身体に記憶されていて消えない。
本人は昔のことだから覚えていないだろうが身体は覚えている。
それがわかってから、ますます患者さんがどんな人生を歩んできたかを聞くようになった。
するとほぼ全ての記録が身体に残っていることがわかり、いかに身体は過去の集大成かを改めて感じた。
そこがわかると治療法も変えなくてはならない。
たまたまの膝痛でも過去を聞きながら治療するのと、その場限りの仕事では治療の深さが全く違う。

なぜ消えないのだろうと考えたときに、何となく古傷はものという気持ちがあるがそうではなく、その古傷も人物形成に一役かっていたわけである。
決して悪かったものではなく、傷を受けたりして必死に治そうと対応した跡が古傷である。
そう考えるとすこし古傷が可愛く、愛おしくなってくるから不思議だ。
そんな気持ちになりながら、古傷を治療するととても良い結果が出る。
古傷も喜んでいるのだろう。

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