古女房の治療

坐骨神経痛で漢方薬を色々と出された方が、便秘がひどくなってしまい、その薬を止めてしまったという。処方を見ると、坐骨神経痛にはピッタリの処方や免疫を上げるもの、腸に対しての配慮、足がつった場合の予防など、細かいところまで先生が気を使われたことがわかる。患者さんにはたまたま腸の効きが強すぎて酷い便秘になってしまったが、医者に言って細かく指導を頂けば解決した問題である。人間関係が出来ていれば患者から先生に、「薬を飲んだら酷い便秘になっちやった。何とかして下さい。」と言えば、「それは○○の薬が効きすぎた。それを飲まないで。」となる。患者さんの気持ちは分からないでもないが、便秘になったことで他のすべてが悪いと判断されては困る。ちょっとした一言ですぐ対応が出来る問題である。おそらくこういう事は数限りなく起こっているのであろう。現在当院で一番古い方が35年目である。40才で治療を開始してもう75才になっている。こちらも23才ぐらいだったから、出てくる話しは昔話ばかりである。毎回治療をする度に同窓会をしているようなものだ。「奥様、○○から大分時間が経ちましたね。」「あれはもう25年前よ。」「○○の時もありましたね。」「あれからもう18年経ったわ。」「お嬢さんが高校生でしたね。」「もう50才を超えたわよ。」「30年ぐらいあっという間ですね。」こういう関係になるともう治療の古女房である。会話や身体を診ながら、今日は○○は止めておこう。△△でいこう。夫婦で言えば、「パパの顔色が何となく悪いから、夕飯はさっぱりしたものしておいた。」となる。ご主人は有り難い。新米嫁さんでは、「今日もステーキにしました。」と言われては、ご主人の箸が中々進まない。便秘が酷くなってしまった患者さんには、「こういう細かいところまで配慮できる先生は貴重です。また何かの時には処方して戴き、問題が起こればすぐに連絡をして対処してもらって下さい。きっといい関係で今後あなたの身体をずーっと診てくれますよ。是非大事にして下さい。」と言ったら、「そんなにいい先生だったのですか?こっちから疎遠にしてしまった。すぐに連絡をしてまた診てもらいます。」「先生は待っていると思いますよ。」治療は与えられるものではなく、作り上げていくものである。疑問点はすぐに聞いて、解決していく過程でいい関係が出来上がる。それはこちらにとっても勉強である。

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