困ったときの一手

長年仕事をしていると治療の残り時間が殆どないのに、症状が全く改善しない方が時々いる。こちらは焦って何とか「起死回生の一手」「満塁逆転ホームラン」を狙いたいが、中々そう楽ではない。特に手のシビレなどは長患いの方が多く、少しぐらい首をいじっても変化しない。そんな時によく使うのが、腕神経の治療である。聞き慣れない言葉だが、解剖を勉強すると必ず出てくる。首の下に鎖骨があるが、そのすこし上で気持ち横を腕に行く神経が束になって通る。腕神経(わんしんけい)と言う。神経が5本出ていて、親指や小指など色々と枝分かれしながら、指まで繋がっている。その神経のポイントをある角度で圧迫すると脇の下や指までシビレてしまう。素人の方にはやって頂きたくない。頸動脈が通っていて、圧迫しすぎると脳貧血で倒れる。仕事柄何度もこちらは解剖実習をしているので様子はわかっているが、このギリギリの神経ポイントが「起死回生の一手」になる。軽いねちがい程度なら、殆ど良くなってしまう。どうも治療というのは、ギリギリの所に決め手が隠れているようだ。この腕神経の治療の治療で何度、私自身が救われたかわからない。

■参考資料 困ったときの最後の一手

 

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