強者患者

常連さんがお尻が痛く鍼をやったが効かない。「これは痔かも知れませんから専門医に診てもらってください。」ということになり、診てもらったのだが納得のいく診断と治療の話しが出なかったという。自分で色々と調べて痔の手術の術式や考え方、肛門科の経緯や歴史、英語の医学論文まですべて読み、一人だけ納得出来る先生を見つけたという。地方の肛門科の院長だったので会いに行って少し無理を言い診てもらったら、「君は医者?」と聞かれ、「いいえ、ただ自分のことですから徹底的に調べました。」「よく僕を見つけたねぇ。」と言われたという。パソコンがこれだけ発達して、欲しい情報は何でも手に入る。そして業界で有名なある肛門科の先生が厚労省の委員をやっていてその議事録まで見たという。我々がよく業界の裏話をするが、そのネタを知っていた。もちろんこんな事が出来る方は今は稀だが、やがては若い患者さんがこの方向になるのではないだろうか。自分の病気を徹底的に調べ、業界の裏話まで精通してしまう。昔は患者さんは先生に命を預けすべて先生の言いなりだったが、この情報革命でかなり対等に話をする強者患者が増える。ちなみにこの方は東大卒である。幸い手術もその後の治療もすべて順調で情報の勝利だが、この情報格差は開く一方である。すべての患者さんがそうなるべきとは言わないが、この流れは止まらない。

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