自分が医者

これは消化器の先生から聞いた話だが、肝臓の悪い方が2週間に1度血液検査に来るという。肝機能を測り、何の数度が上がったとか下がったとか自分で数字の管理をしているという。今週は山に登ったから肝機能が良かったとか、今週は飲み会が続いたのでダメだったとか、座禅を組んだから数字が下がったとか・・・。自分が自分の病気の医者になっているという。もちろんわからないことは医者に聞くとしても、血液検査も慣れてくればある程度は読めるようになる。これはとても大事な考え方だと思う。偏頭痛の方が来ていて、自分で管理のためのメモを取るように話をした。新しい薬を飲んだら効いたとか、その後友人と会ったら、また痛くなったとか、夕ご飯に○○を食べたら治まったとか、生理で痛みがひどくなったとか・・・。薬を出している医者も全てがわかって処方しているわけではない。おっかなびっくり出している部分もある。鬱病でもそうである。この間出した薬は効いているのかなぁと思っている。患者が「効いた。」と言えば続けてと言うし、「効かなかった。」と言えばじゃ変えましょうと言う。結局わからないのである。何年勉強しても人の身体はミステリアスである。日本人の気持ちの中に医者に全てを任せているという考え方があるが、任せた医者が全てを理解しているわけではない。患者の情報をもとに、「この間の治療はいいと思ったけど、ダメだったかぁ。じゃ違うやり方でやるかぁ。」と思っている。当院では長年治療を受けている方だが、「今度ここをこうやったらどう?」と意見を言ってくる方や強者になると、「今日はここに鍼を1本、あのツボに1本、そして最後は首の矯正をやって様子を見よう。」と指示してくる方がいる。その方にしてみるとこっちが生まれる前から治療を受けていて、治療するとどうなるかは百も承知している。そして自分の今日の体調はこうだからこうするといいということも知っている。実にやりやすい。言われたとおりやるとうまくいく。時々、今日の鍼は刺激が弱かったとか、もう少し深いところにツボがあるとご指摘頂くが、どっちが治療家だかわからない。しかしこれぐらい自分の体を理解している方なら、安心してみていられる。その方はご自分の体に関して自分が医者だと思って疑わない。

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