葛根湯医者

江戸時代の古典落語に「葛根湯医者」という話がある。

「お前さんはどこが悪いんだ?」
「先生、どうも、頭が痛くてしょうがねぇんですがねぇ。」
「んー、頭痛だなぁ、そりゃ。
 葛根湯、やるから、飲んでごらんよ。」
「先生、あっしは、目が悪くってねぇ。」
「ん、そりゃ、いけないなぁ。
 目は眼(まなこ)といってなぁ、一番、肝心なところだぞぉ。
 葛根湯やるから、せいぜい、お飲み。
 その隣の方は?」
「いや、兄貴が目が悪いから、一緒に付いて来たんで。」
「そりゃ、ご苦労だなぁ。
 退屈だろう。
 葛根湯やるけど、飲むか?」

何でも葛根湯だが、世間では葛根湯は「風邪の引き始めに飲む」と思っている方が多い。確かに間違っていないのだが、実はあの薬の薬効は肩から上の血流剤である。だから頭痛、肩こり、鼻炎、風邪など肩より上の症状に何でも効いてしまう。そういう漢方薬としての作用があるのだが、病気と薬を一対一対応で覚えてしまうと、「風邪の引き始め=葛根湯」となり、頭痛に使えるの?となってしまう。この季節のどや頭痛、乾咳など何でも使える。ある意味昔の葛根湯医者は正しい。

 

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