複雑すぎた膝痛

最近膝痛の方が多いのは私がブログで膝のネタを数多く書いているからだと患者さんに教えてもらった。先日来た患者さんは実に複雑で1時間の治療中、悩んで頭を抱えてしまった。まず右膝痛なのだが、半月板を手術している。術後改善せず、膝の裏が痛いという。そこにはベーカー腫瘍といって少し腫れもある。それ自体は原因ではないのだが、普通の膝痛と少し痛む場所が違う。珍しいなぁと思いながら、全身を拝見するとまずスタマックラインがある。胃炎である。硬さから判断して長患い。話を聞くと、「時々ムカムカすることがあり、辛いときは胃薬を飲む。」と言う。スタマックラインは左の太腿の少し外側に出るので、てっきり「胃炎で左脚が硬くなり、その影響の右膝痛であろう。」と予想して、患者さんに説明をした。しかしそれでは十分膝の後ろの痛みが説明できないことがわかったので、痛むところを詳しく診たら左の股関節や右の大腿二頭筋の外側(太腿の裏の外側)と腓腹筋外側頭(ふくらはぎの外側)に広い範囲で異常な痛みを訴えてくる。こんな例は診る事は少ないので、おそらくかなり古くから環境が悪いのだろうと反対のふくらはぎを調べたら、異常に痛がる所(後脛骨筋)を見つけた。これは自然発生的に出ることはあり得ないので話を聞いたら、「あ、そういえば昔痛めた、どちらの足かは忘れたが・・・。」と言う。これは間違いなく古傷である。それも十数年経っている。試しにそこの治療をすると右膝が楽だという。ここまでくればしめしめで、本人は痛がったが集中的に治療した。そのあとあら不思議、正座が出来なかったのがかなり曲がる。そして患部の治療、筋力が弱くなっているところをキネシオテーピングで補強した。試しに走ってもらったら、走れるという。結局、左後脛骨筋の古傷で右膝に負担がかかり続け、スタマックラインで益々悪化、しかし右膝で耐えられなくなり、左の股関節も限界に来て、仕方なく又右膝に負担をかけ続け、半月板を痛め手術したが改善しなかった。長年の治療で膝痛に後脛骨筋が絡むと極めて難しくなる。以前膝痛の解説で後脛骨筋は複雑なので解説を省いてしまったが、まさにその例であった。ご本人は山登りをするぐらい筋肉の質が抜群にいい方なので、古傷を忘れたりしていたのだろうが、身体は覚えている。十数年間の身体の歴史は正確に筋肉に残っている。

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