酷い腰痛で悩める喜び

以前にがんの患者さんから、「最近腰が痛くて嬉しい。」と聞いた。
聞き間違いかと思ったら、本当に嬉しいという。
がんを患うとどうしても生き死にの問題になる。
どれだけあと寿命があるのだろうか。
再発はするのだろうか。
残された家族はちゃんとやっていけるのだろうか。
寝ても覚めてもがんが頭から離れないという。
そんな時腰が痛くなると、腰痛では死なないと思ってしまうと言う。
ひどく痛みを感じるということは生きている証拠で嬉しいと言う。
その瞬間だけでもがんで悩まないことが幸福だと言う。
がん以外で悩めるなんて夢のようだとも言う。
こういう心理は病気になってみないとわからないが、成る程そういうものかと唸ってしまった。
もちろん腰は治るにこしたことはないが、腰が治ったらまたがんだけ悩むというのも少し複雑な気持ちである。
それだけ病気は心の深い所まで入り込む。
特にがんは。
がんの方はよく病気とだけ戦っていればいいという訳ではないと言っている。
人が健康食品を勧めてくれたり、先祖が悪いとか、他人は親切心だろうが結構煩わしいという。
病気にならないに越したことはないが、腰が痛ければそれなりの悩み、がんはがんなりの悩み、中々平穏な日々を過ごすことは難しい。

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