20年目の鍼

もう30年以上治療をしている方が不眠症で悩んでいる。
マッサージで中々良くならないので、20年以上前に鍼を勧めたら、
「私は鍼は嫌い。」
これで終わり。
こちらも気が長いから、不眠症の酷いときには何度も勧めたが、
「鍼は嫌いって言ったじゃない。」
で終わり。
こんな会話を20年以上続けたある日、過去最悪でさすがに本人もどうにもならないので、
「少しだけなら打ってもいい。」
ということになり頭に初めて鍼を刺した。
そうしたらこれが抜群に効いて、言われた言葉が
「こんないいものならどうしてもっと早く勧めて下さらなかったの?」
「いえ、20年前から勧めていますが・・・。」
「患者がいやと言っても、良くなるなら勧めるのがあなた仕事でしょ。」
「え、・・・・・・・・・・。そうですか・・・。」
この仕事を長くやっていると気が長くなる。
多少断られても何かの時に変わる時もあると思ってしまう。
20年待てたのだから、5年や10年はどうということはない。
世の中スピードが大事と言っているが、人の気持ちの変化は数十年かかるものである。

image_print印刷する