膝の痛み

picture_knee膝の治療10通り
膝に痛みで来院される方が多い。膝治療に関して思いつくだけでも10通りの方法が浮かぶ。
変形がひどく手術をしなくてはいけない方は別だが、今までの経験でほとんどの方がこの治療でうまくいく。ただし気をつけなければならないのは膝の熱だ。膝 が熱を持っている場合、熱を取らない限り治療がうまくいかない。治療前には必ず患部の熱を診るようにしているが、皆さんは意外と膝の熱に気がつかない。膝 治療はそこが落とし穴で治療が長引くゆえんである。

  1. 太腿をほぐす-膝痛は膝が悪いことは少なく、初期ならほとんどが太腿の硬さが原因である
  2. 太腿にテーピング-キネシオテーピングという方法で弱くなった太腿の筋肉を補強する
  3. 鍼治療-痛いところに刺すというよりは反対側の足だったり、太腿に裏側だったり、周りをほぐす
  4. サポーターで補強-最近はサポーターは横に金属の入った強いものもある
  5. アルツ注射-保湿などの効果があるヒアルロン酸注射である
  6. グルコサミンとコンドロイチン-健康食品に詳しい方はご存知だと思う。膝痛の初期はよく効く
  7. 中敷きによる矯正-靴の中に中敷きを入れ、膝や股関節の負担を減らす方法
  8. 漢方薬-防已黄耆湯・八味地黄丸・疎経活血湯・五苓散・牛車腎気丸-思いつくままに書いてみた
  9. 氷で冷やす-これは熱を持っている急性期のみ
  10. 膝裏の治療-後脛骨筋の治療-これは少し専門的になるので説明割愛

病院では保険診療という制約があるので、痛み止めや注射とリハぐらいしか出来ないが、我々は自由診療なので法の範囲内で何でも出来る。まず膝だが我々が眼を 向けるのは太腿の筋肉の状態である。その筋肉は膝のお皿を包み込んでいるため、硬ければ膝が悪化する。膝痛は膝が悪いのではなく、取り巻きが悪いのであ る。まずその筋肉をほぐして鍛えることが第1選択。次にテーピングで補強や鍼をする。鍼も膝に感染があると拡げてしまうので、注意が必要だ。次にサポー ターなどとやることは沢山ある。

膝の悪い方が病院を選ぶ場合、我々は2つの基準を持っている。皆さんはいい医者に手術をしてもらえばそれで 終わり、と思っているだろうが現実はその後のリハがとても大事。私自身、病院でリハをやっていたので、手術後の患者さんをよく診たが、術後のリハで機能は 全く違ってしまう。特に膝の場合は正座が出来る時間や歩ける距離、じっとして立っていられる時間などリハに大きく左右する。最近はあまりリハに力を入れて いる病院が少ないのは残念だが、我々からすると手術をしてから治癒に向けて治療がスタートすると思っている。

よく膝に水が貯まると言います が、慢性になっていないでしょうか。数ヶ月に一度必ず抜くというのは炎症が治っていないということです。熱が出てまた数ヶ月後にまた出て、何度も繰り返し たらおかしいと思いませんか?膝も同じです。抜くのは治療ではなく処置です。治療というのは水が貯まらなくなることを言います。膝の場合、太腿の筋力が影 響しますのでサポーターをしたり、股関節を緩めたり、お腹の調子を整えたり、心臓の圧力を変えたりと周りの環境を良くしてあげれば、貯まらなくなるもので す。

熱対策
膝の治療は患部に熱を持っているとうまくいきません。徹底的に冷やすように指導するのですが、これがうまくいきません。膝は構造的にお皿側ではなく裏に動 脈が通っているので、お皿だけを冷やすのではなく、一周冷やすことが大切です。一番いいのはビニール袋にクラッシュなどの氷を入れ、2-3個膝の周りを囲 み、包帯などで固定します。包帯もエラスコットといって少し弾性包帯を使うとしっかりと固定できます。時々創意工夫が好きな方がいて、氷の代わりに保冷剤やアイ スノン、氷に塩を入れたりします。気持ちはわかるのですが失敗します。酷い方はドライアイスを使って凍傷を起こした方もいました。こちらが氷というにはわけがあって、温度が0度ですから凍傷は起こさない配慮があるのです。こちらは色々と試して安全で一番効果的な方法をお知らせしているのです。すぐに工夫しようという気持ちは分かるのですが、こういう場合、創意工夫はいりません。湿布もかぶれやすい方にはセロハンを取るなと指導しています。膝の裏はかぶれやすいですが、お皿は 比較的強いと思います。冷やすこと一つもなかなか真意か伝わりにくいと感じていますが、この熱を取ることは譲れません。熱を取るだけで治る方もいるくらい です。

 

 

 

 

 

 

膝に熱を持っていると反対側の足まで硬くなってきます。右膝が痛くて熱がある場合、反対の左足に負担がかかり、筋肉が硬くなるのは理解出来ると思いますが、実は負担をかけなくても熱を持っているだけで、反対の足が硬くなってしまうのです。これは今まで体験していることですが、安静にしていても熱を持っていたら、反対側もどういう防御が働いているのかはわかりませんが、硬さが取れないのです。熱がうまく取れれば、反対側のこりも連動します。これなども熱をどうしても早く取りたい理由ですが、説明しないとなかなか分からないと思います。こういう現象を見るといかに左右バランスを取りながら身体が機能しているかを感じます。

湿布でやるのなら、30分に1度ぐらい取り替える気持ちでやらないと冷やせません。熱が取れたら太腿の左 右差を取ったり、補強をしたりで治療します。熱は甘く見ると何ヶ月も膝の痛みは取れません。確認の仕方は右手で右の膝頭、左手で左の膝頭を触って左右差を 確認して下さい。本来差がないはずです。

大腿が重要
膝の治療がうまくいかない場合、殆どは太腿の問題ですが、まれに太腿の裏に原因がある場合があります。ハムストリングスといいますが、滅多に膝痛と連動し ないのですが、連続して負担をかけたり、冷えで坐骨神経痛を起こしたりすると時々でます。治療家としては見落としてはいけないところですが、数としては少 ないので、診て貰えず膝で苦しんでいる方もいるのではないでしょうか。

足の治療をしていると時々、この方は数年後に膝痛が出るだろうなぁと 感じることがある。その特徴は膝の内側(内転筋)が硬くなっている場合だ。太腿は構造的に筋肉が前面、外側、内転筋、後ろとついている中で、膝に一番影響 を与えるのは前面の筋肉(大腿四頭筋)だ。大腿四頭筋が硬くなると膝痛が出る。しかし後ろの筋肉(ハムストリング)や外側も硬くなると、本来硬くならない はずの内転筋も硬くなってくる。内転筋が硬いとそろそろ膝痛が出そうだと感じるわけである。逆に大腿四頭筋と内転筋を治療すると膝は余程半月板でも痛めて いない限り、快方に向かう。身体は今後起こるサインを出しているが、なかなか正確に読めないので、専門家の治療が必要である。

膝が痛くて床 に着けないが、ある角度で着くと膝が痛くないという方がいる。膝に対してそんなに負担をかけていないのにと言う。これは典型的な太腿の症状で、太腿の筋に の硬さ故起こることである。ある角度で膝が痛くないというのは、その角度になると太腿の緊張が外れる。太腿の筋肉を包んでいる膜がお皿の骨を包み込んでい るので、膝の運命は太腿の緊張で決まってしまう。治療したらやはり太腿がガチガチ。治療後は嘘みたいに膝が何ともない。よくあるパターンだが、膝の痛みは きついので、時々は太腿の硬さに眼を向けたいものだ。

鍛える
膝が悪い人の場合、太腿を鍛えるように指導しますが、走る自転車と走らない自転車では結果が違います。ジムでよく自転車をこいでいますが、連続で練習する と鼠径を傷める方が多く、理由を考えてみました。走る自転車では鼠径に負担が来ないのにどうしてと。答えはすぐに分かりました。走る自転車では連続でペダ ルをこぐことはありません。惰性でかなり走るので、少しスピードが落ちたらまたこぐ程度です。しかしジムのは常に負荷をかけていますので、手が抜けませ ん。それで鼠径が辛くなるわけです。やっていても辛いなぁと思いながらの練習ですから、負荷がかかっていると思います。外で走っているときはペースを落と したり、結構楽になっていますので、辛くありません。同じ自転車ですが、走るのと走らないのでは全く違います。歩行マシンでも同じ事が言えると感じていま す。

膝が痛くて足の筋肉を鍛えるためにトレーナーに指導をしてもらったが、痛みが取れず当院に来る方がいます。どうしてそういうことが起こるのでしょうか?
理由は簡単です。トレーナーは根本の考え方が筋肉をどうやって増やすかしか考えていません。我々治療家は症状をどうやって取るかしか考えていません。ト レーナーはゼロをプラスに、治療家はマイナスをゼロにする事しか考えていません。膝が痛いのですから、弱い筋肉を鍛えて強くするという考え方は間違ってい ないように思うでしょうが、まずはマイナスをゼロにする必要があります。治療家の所でゼロになった後、つまり良くなった後に、今度は鍛えてもらえば何の問 題もないのに、何でも鍛えればいいと思ってしまう。気持ちはわかりますが、身体に痛みがあるということは正常ではないのです。マイナスだということを自覚 していただきたいと思います。ですから、治療家が先でトレーナーが後です。

膝を痛めた方が膝に対してどういう対応をしたらいいのか聞いてき た。負担をかければいいのか、楽をさせていいのか、無理をして筋トレをするのかが分からないという。考え方としては膝、特に半月板などは血流が悪いところ なので、膝自体を治すというよりは、回りを強くするという考え方をしている。膝を王様と思って下さいと説明している。王様一人では何も出来ないが、取り巻 きが強くなれば王様は騒がない。いかに回りを鍛えるかで、王様が騒ぐかどうかが決まる。そう思えば太腿などを鍛えるだけで十分である。

胃腸との関係
左膝痛を訴えてくる方がいる。調べてみると胃腸が原因しているケースがある。食べ過ぎや便秘などで左坐骨神経痛が出て、その影響で左膝にくる。本人は整形 の領域に問題があると思っているが、なんて事はない食べ過ぎとお通じがないだけである。原因を話すと本人もそれなら思い当たることがあるという。階段を上 り下りして足を使ったわけでもないのに不思議がっていたが、理由がわかれば本人も安心する。食べ過ぎ飲み過ぎから胃腸の疲れには普段から胃薬を決めておく とか、乳酸菌を合わせておくとか普段からの予防が力を発揮する。食べ過ぎでお薦めなのは大正漢方胃腸薬などの安中散がいい。あとは百草丸。昔からある物を 活用したいものだ。

左膝を痛めている方が胃腸を壊すと膝の痛みが悪化します。関係ないと考えがちですが、漢方では胃が具合悪くなると胃経と 言って脚に反応が出ます。添付の通りにお腹から足に向かってツボを結んだ線が繋がっていますので、特に左膝と連動してしまいます。決して食べ過ぎで体重が 増えたことになる膝痛ではなく、ツボの反応として出ます。ご注意が必要です。

以前、腰痛を胃だけで治した方が、今度は膝が痛いといってき た。特別無理はしていないという。話を聞いてみると下痢が続き、抗生剤を飲み続け、胃がまたやられた。胃経といいって、その反応がまた左足に出ていた。そ の線上に左膝があり、その痛みだとわかった。胃で膝にくることを不思議がっていたが、我々にはいつものことである。左膝に対して全く原因が思い当たらない 場合は、一度胃を疑うといい。胃薬で治る膝である。

リンパマッサージ
picture_talcこ じらした捻挫を治療した人が、全く楽にならないという。診ると脛がパンパンに張っていて、前回の治療を全く受け入れていない状態だった。こういうケース は一度リンパマッサージをして、還流促進をすると楽になるケースがあるので、タルクという粉を使って、これでもかというぐらい足を擦った。15分ぐらい やった所で、痛みを確認してもらったら、半分以下になっているという。本人はビックリである。以前に膝痛の方で、うちで何をやっても効かなかった方が、リ ンパマッサージ1回で膝痛が軽減したと聞いて驚いてしまった。それ以来、こういうこじらした方には必ず行っているが、極めていい成績である。捻挫の後遺症 で悩んでいる方は多いが、このリンパマッサージは整形外科や骨接ぎでもあまりやられていない。苦肉の策での治療だが、悩んでいる方にはお薦めの治療であ る。

走りたい
マラソンをやっている方がよく来る。脛があまりに硬いと膝痛が治まらないので、揉んで治ればいいが、駄目な場合はパルス(低周波治療器)を使う。足に鍼を 刺してそこに電極をつなぎ、カエルの足の実験のようにピクピク動かす。パルスはエレクトリックマッサージと言って、揺さぶることでほぐれるので、限界近く まで行う。筋肉の質のいい方だと5分ぐらいでパルスを弱く感じる。これはほぐれた証拠である。そして少しあげて15分ぐらい続ける。中々ほぐれない方もい るが、おおむねいい結果が出ている。初めての方には少し刺激が強いかも知れないが、慣れている方は「電気をかけて。」と言って来る。このパルスの効果を知っているのである。マラソンはこの脛をちゃんと治療しないと途中でリタイアしてしまう。

マラソンをやる方で膝の症状を訴える方は多くいま す。膝のお皿が動きが悪く、無理をすると膝痛が出る方がいます。こういう場合、膝のお皿の下に鍼を入れると即効性があります。ただし、また無理をすると辛 くなるので、持続性はありません。膝の中に鍼と言っただけで怖がる方がいますが、膝に腫れがない限り安全です。治療前に膝のお皿が、コキコキ言っていた方 が、治療後には滑らかになり音が消えます。リハビリなどでは中々膝のお皿の治療はないので、マラソンや自転車をなさる方は覚えておいて下さい。

学 生時代、膝の半月板を痛めて手術をした方が、50代になりいきなりマラソンを始めた。初めて見るとやはり古傷の影響は大きく、走っている途中で痛みが出て 完走できないと言う。身体を診ると脚の左右差がひどい。私があんな状態ならマラソンはしないと言っても、本人は決めたことを曲げない。治療してもすぐ駄目 になり、2つのことを伝えた。まずマイナスからのスタートなのだから、マイナスからゼロは治療で出来る。あとは筋トレ、これはできれば週2-3回プールで 1時間半歩くことを約束して欲しいと言ったら「やる」という。やってみて本人の感想にビックリしてしまった。「水中で歩くだけなのに、使っている筋肉と 使っていない筋肉が初めて分かった。こんなに差があるのなら、走って痛くなるのは当然だ。」ようやくわかって戴けたと思った。それを地上でやるのだから完 走できるわけがない。初めて自分の脚の状態を理解してくれた。治療はこの問題点を自覚することから始まる。


10年以上前の事だが、ある脳卒中の患者さんの膝を治療をしようとして足を見たら、爪が変形していた。話を聞くと脳卒中をやってから、足の感覚が鈍く自分 では切れない。旦那も年で手が震えて、危なくて切ってもらえないという。それ以来、困っている。よく見ると足の親指の爪が2枚になっている。古い爪を痛め たみたいで新しい爪が出られないでいた。爪が前に伸びるのではなく、厚みが出て皮膚に食い込んでいて、いかにも痛々しそうである。爪切りで爪を整えようと したら古い爪が取れてしまい、新しい爪だけになった。皮膚に食い込んでいるところも処理をした途端、何と膝が痛くないという。これにはこっちも驚いて、 「本当に痛くないんですか?」と聞いてしまった。まだ膝の治療は何もしていない。足の爪が膝や腰に影響力が大きいことを学んだ。このことがヒントになり、 爪を切る道具を揃えた。時々治療しながら、私に足の爪を指摘された方も記憶にあると思う。重症の巻き爪などは医者に診てもらわなければならないが、お年寄 りの方、ご自分で足の爪を切れない方、腰や膝痛の方、またゴルフやテニスをなさる方、当院では足の爪治療をおこなっています。ご相談下さい。