学ぶ場がない

親指が突然痛くなった方が、整形外科に行って塗り薬をもらったが全く効かないので不安を訴えてきた。それは医者でばね指(弾発指)と言われ、お薦めの治療はステロイドの注射、それが効かなければ手術がいいい。昔は一生懸命、患部に鍼をやっていたが、注射にはかなわない。どうしても注射や手術が嫌な方は24時間氷で連続冷やす方法もあるが、皆が出来るわけではない。塗り薬で効いたという方はあまり聞かないので、注射から試すといい。そんな話をしたら、「効かないのにどうして塗り薬を出すのですか?」と聞かれ、「塗り薬は広範囲の場合はよく効くが、ばね指みたいに痛みが強く、狭い範囲だと軽い方しか効かない。」と説明した。数日前も腱鞘炎が長引いている方に、手術を勧めていたのだが、中々本人その気にならない。もう少しもうすこし様子を見ると言って2年が過ぎた。我々は長い経験があるので、症状に応じてドンピタの治療法は今はこれですと指導できる。しかしよく考えると、身体のことは子供の頃から医者通いをしていれば何となくわかるが、殆ど病院に縁のない方は辛いときに何をしていいか分からない。学ぶ場がないのである。義務教育で、「心臓・血管・臓器」など学んでも実際の医療にはあまり役に立たない。親が胃が悪くいつもこんな薬を飲んでいたという方が余程実践的である。当院の常連さんを見ながら、「うちは寺子屋だなぁ。」と感じる。自分の病気が問題なくなると、他人の病気に対してアドバイスしている。にわか医者である。そして答えられなくなると、質問に来る。答えをつかむとまたしゃべっている。この寺子屋当分続きそうだ。