音楽家の身体は格闘家と同じ
以前から何人かの音楽家を治療している。ほぼ全員に言えることは身体が格闘家と同じである。傍から見ていると音楽家は上品で身体を酷使する格闘家とは全く違うと感じるだろうが、実際はそうではない。自分の才能と戦い、心の中でもがき、挑戦して敗れ、又希望を燃やす。格闘家がアドレナリンが沢山出て、闘う時と全く同じである。決して上品に音楽活動をしているわけではない。以前、亡くなられたN響の岩城宏之先生の話を聞いたことがある。指揮者の持病ともいうべき頸椎後縦靭帯骨化症を患い、テレビでも痛々しいほどのコルセットをされていた。1回の演奏会で指揮棒を2万回ほど振るという。これでは頚はもたない。その後胃がん、喉がん、肺がんと続いた。ある楽団の方が、「先生、色々と病気をされて大変ですね。」と言ったら、「何が?」と返されたという。「頚とがんを3回・・・。」「自分が音楽を極めようとしていることと、病気は全く関係ない。」と言ったという。信じられないほどのポジティブ思考だったという。身体を拝見したことはないが、身体は格闘家と同じだったことが容易に想像される。これは聞いた話だが、音楽家にとって必要なものはまず体力、そして多少の才能だそうである。格闘家なら相手を倒せばいいが、音楽家は自分の心と身体が敵なので、治療は難しい。