人の身体はオバケ

この仕事を長くやっていると、こんな事が起こるはずないということが稀に起こる。一晩にして全頭脱毛や極度の筋肉疲労が一瞬にして良くなったり、今までの治療経験を根底からひっくり返される感じである。突然変異と言ってしまえば楽だが何処かの遺伝子のスイッチが入り、短時間で身体が激変してしまう。そんな事が実際起こるから身体は興味深い。今まで体験して1番驚いたのは大分前に、ある女性が離婚後体調を極度に壊していた。心が病むと人はここまで筋肉の状態が悪くなるのかと、とても興味深く治療していた。そんなある日何が起こったのかはわからないが、身体が別人になっている。それも瞬間的に。本人も何かきっかけがあれば納得いくだろうが、特に思い当たらないという。こちらも訳が判らなくなって、身体をくまなく調べたが、今までの悪い筋肉の状態が全くない。何かからまるで解放されたように良くなっている。希望が見えて良くなったのならわかるが、別段何も起こっていないという。これはもうお手上げである。何度かそんな経験をするうちに、身体に対して何とも言えない興味を持ちだした。一体何がどうなってこういう事が起こるのだろう。ライオンタイプの方なら、多少放っておいても自然に良くなるが、本来、小鳥タイプはケアをしながらそれでも病気になってしまう方なのに、突然良くなることがある。そういうときはチャンスなので、どういう心で何処で何をどうやったのかを詳しく聞いている。身体を変えるスイッチは意外なところに存在している。お風呂の温度だったり、考え方だったり、生活の順番を変えることだったり、うわの空だったり・・・・。本当に人の身体の治療は雲を掴むような話で、確定的な答えがない。そういう経験を何度となくしていくうちに、物事は程々に、中庸が1番、適当の勧め、いい加減の勧め、物事60点主義、我慢弱い人間作りと色々なアイデアが出てきた。人の身体はオバケみたいな所があり、極めて掴みにくい。掴みにくいので、いい加減に少し余裕を持たせるぐらいの生活で身体は素直になる。根を詰めたり、限界までやると身体からどういう反乱を起こされるかわからない。良くなる突然変異なら良いが、悪くなる突然変異は殆ど治療法がない。くれぐれも人の身体はオバケであると認識して欲しい。