痛みを楽しむ
常連さんの中には来院されて、「今日はどうですか?」と聞くと、「う~ん、え~と、2日前は首が痛かったけど、今は大丈夫。」という方が時々はいる。
鍼灸院に来て自分の痛いところがすぐに出てこないのだから、実に素晴らしい健康管理をしている。
しかし生身の人間である以上、何かの拍子に痛みを感じた時は一気に不安になり大騒ぎである。
「今まで何ともなかったのに、○○の痛みが続いている。」
「膝の痛みに薬を飲んだが全然効かない。」
しかしこういう方は普段は、「う~ん、え~と・・・」と言っているのだから、多少の痛みは楽しんだ方がいいとアドバイスしている。
「痛みなど楽しめない。」
と言われてしまうが、我々から見るとそうでもない。
これは私自身が治療を生業としているからかも知れないが、普段痛くない腰に痛みを感じるとどうしても、何が原因?、どうやって治すの?、何をすると悪化するの?、治るときは何が大切?、やってはいけないことは?、など色々と疑問が出てきて、つい楽しんでしまう。
丁度昆虫を好きな子供が見たこともない虫を見つけて、興味津々で観察しているのと同じである。
こちらは職業だから、皆さんも同じ感覚を持って下さいとは言わないが、前回の腰痛より楽なのは○○のお陰かなぁとか、本当に満腹になると○○は悪化するとか、丁度良い機会なのでプチ断食をしようとか、昔みたいに元気がないから少し休息を取って体に何が起こるか見てみようとか、ご自分が感じるままに痛みを楽しむといいと思う。
そしてその痛みを乗り越えたときに、予防と共に痛くなく生活できることに本当に感謝できる。
1日痛みを感じないで生活出来ることがどれだけ幸せであるか、心の底から感じられる。
やはり真夏の炎天下の中で働いた者でなければ、エアコンの部屋のありがたさはわからない。
痛みを感じればこそ、それから解放されたときには幸福感が味わえる。
少し痛みを楽しんでもいいと思う。