病院のリハビリと患者の不満
首を痛めて手の握力が中々出ない方を今何人か治療している。大体握力が7kg以下だとコップを落とす。治療開始時が5kgだと大体15kg~20kgを目標に治療をするのが普通だ。我々から見るとスタートが5kgで治療して20kgになれば4倍である。コップは落とさないし、まあまあ日常生活も不自由ながら出来る。病院では殆どもうこれで治癒になってしまう。しかし患者さんはこのぐらいで納得されている方は殆どいない。確かに握力を測れば4倍だが、本人はまだまだ生活に支障を感じるレベルである。仕事をしても根は続かないし、雑巾は絞れない、ジャムの瓶は開けられないし、ドアノブも回しにくい。何処が治ったのかと患者は言いたいのだ。確かに以前よりはいいが、患者が求めているのはもっと遙かにレベルの高いものを求めている。完治とは言わないが最低限、何をやっても問題のない手である。それを達成するには最低でも25kgは必要だ。30kgでも少し文句が出るかも知れない。スタートが5kgの方を25~30kgに持っていくのはかなり難しい。こんな所に病院の治癒と患者の心に差が開いてしまう。病院勤務時代に良くこのタイプの苦情を聞いた。「整形の先生はもう大丈夫で治癒と言われたけど、前みたいには何も出来ない。何が治癒なのか、15kgになっても手を使う度に治っていないと感じてしまう。先生は治癒と言うけど・・・・。」以前、五十肩の患者が肩の可動域が70%ぐらい戻ったところで、先生からもう大丈夫ですと言われて、ショックでリハビリ室に来たことがあった。「またこれしか挙がらないのに何処が大丈夫なのかしら。いい方と同じになるまでリハをやるのかと思っていたら、これで打ち切りなんて信じられない。」我々から見ると五十肩は必ず治るので、このぐらいで治癒と言ってもいいのだが患者さんは納得しない。どうしても保健治療の限界を感じる。自分も五十肩をやったのでわかるが、「多少お金はかかってもいいから、ちゃんと早く治してもらいたい。」と思ってしまう。やがては混合治療が認められるであろうが、患者さんの満足あっての治療である。どうしても病院のリハには愚痴が出てしまう。