患者の我が儘にも一理あり
脳卒中の患者さんが少し我が儘である。歩行訓練をしようとすると、「今日は暑いからいいや。」と言う。少し涼しい日に勧めると「また次回にしよう。」と言う。秋晴れの絶好の日に勧めると、「今日はやりたくない。」と言う。手足の麻痺があるので鍼を勧めると、「痛いのいや。」と言う。では感覚を戻すために灸を勧めると「熱いのはいや。」という。どうにもならないので、どうしましょうかというと、「痛くも熱くもなく治すのがお前の仕事と。」と言われる。そして最近は不眠症で夜寝られないという。うちに来るとたっぷり昼寝をしていて、「特にここに来た日は寝られない。」と言う。そう言われて次から、「寝ないで下さい。」と言うと、「少しはゆっくり寝かせろ。」と言う。患者さんの我が儘には慣れているが、少し視点を変えると新しい治療法が見えてくる。本人が運動をしなくても筋力がつく治療や、痛くない鍼や熱くない灸などはある程度開発されている。昔はお腹の病気で大きく開いた手術も今は内視鏡でやっている。患者さんの我が儘を活かすと新たな治療になる。そこに気がついてから、少し我が儘を聞くのが楽しくなった。