この病院で死にたい

病院勤務時代に入院していたおばあちゃんが、「私はこの病院で死にたい。」とよく言っていた。我々から見ると最高の医療を受けたいのは人の常だが、しかし患者心理は少し違う。たとえこの病院の医療水準が最高でなくても良いのである。この病院の先生が好きなのか、お世話になったのかはわからないが、この病院とかかわっていたいのである。当時はそういう患者心理がわからず、いい医療がすべてと思っていたが実際は違う。先生との関わりもそうである。がんを患い、この先生に診て頂けて良かったという方はあまり結果のことを言わない。多少の見落としがあったとしても先生を悪く言わない。信頼がすべてである。患者心理にはそういう部分がある。もちろん見落としはないに越したことはないが、人間のやることなので100%というのは存在しない。しかし信頼がないとほぼ満点の医療を提供しても訴えられることがある。このおばあちゃんの言葉、最近とても心に重くのしかかっている。