いい医者、悪い医者
こういう仕事をしていると医者の噂は多い。「あの先生はすぐに薬を出してくれるからいい先生。」「風邪の予防で何かくださいといった薬をくれなかった。あういう先生にはかかりたくない。」「何を相談してももうすこし様子を見ようと言われる。もう15年も様子を見ている。」患者さんも色々なことを感じながら診察を受けている。仕事柄我々は治療時間が長いので、こういう話題は尽きない。先日も常連さんが、「少しコレステロールが高く、今まで診てもらっていた医者に薬を出して数値は安定していたが、その医者がクリニックを閉めるというので、後輩の医者を紹介してもらった。その先生に行ったら、極端に薬を出さない先生で『多少のコレステロールは問題ありません。』と言われ、薬を止めた途端、コレステロールが上がり始めた。不安になり先生に相談したら、『では首のドップラー(血管の様子を見る)をやりましょう。』ということになり、調べてもらったら問題ないという。コレステロールは血管を硬くするので多少高くても首が大丈夫なら薬はいりませんと言う。これはどうなんでしょうか?」と言う。医者の気持ちも分かるし、患者の気持ちも分かる。医学的には多少コレステロールが高い方が長命だが、患者の心理的には徐々に数値が上がるのは気分は良くない。私が医者なら、「では2日か3日に1度飲んで様子を見ましょう。」と言って、折衷案にすると思う。医学的に正しいことだけでは患者が納得しない。何処に基準を置くのかは難しいが、医療もさじ加減である。