親の幸福
常連さんの娘さんが彼氏を連れてくるという。親としてソワソワする気持ちは分かる。その常連さんのお父さんも治療に来ているのでこういう話をした。「連れてくる孫の婿殿と合うために、あなたのお父さんだってソワソワしているんですよ。ここはあなたが親孝行すると思って、お父さんのために礼服や燕尾服、お母さんのために黒留袖を一緒に見に行ったらどう。その後は当然食事になるし、色々と打ち合わせもある。式でお父さんに挨拶を頼めばお父さんは原稿書きから練習まで始める。もうお父さんだってソワソワが止まらない。相手の方と食事となれば又緊張する。孫が初めて連れてくる時もお父さんに見定めてもらえば、着ていく服だって気にする。『ようし、俺が見定めてやる。』と頑張る。そのあと式の打ち合わせなど何かにつけてあなたの親に頼れば、親はやる気満々になる。少し負担をかけるのも親孝行。」そんな話をしたら、「いや、それは気がつかなかった。いい話を聞いた。」と言っていた。年をとると時間とお金があっても感動が減る。まして自分が主役級の仕事は殆どない。食べ物で贅沢をしても医者に怒られるだけだし、デパートに行っても買う物はない。タクシーを使うより歩きたいし、旅行だって行くのが大変。結局お金を使う場所がない。娘の又娘となればお父さんは張り切る。少し負担をかけるのは最高の親孝行。打ち合わせの食事代ぐらいはお父さんが出してくれる。年をとるとそんな事が最高に嬉しくなるものである。