我慢できない患者と医者の思い込み

常連さんがここ3週間、咳が止まらないという。近くの耳鼻咽喉科で、「少しゆっくり治しましょう。」と言われ、治療を受けたが1週間経ってあまり良くならないので行ったことのない内科に変えたという。内科では若い先生で、「喘息かも知れませんね。」と息を吐く簡単な検査をして、喘息の処方をして様子をみましょうと言うことになった。2週間の処方で咳が半分ぐらいになったものの、最近は喘息発作のために出された吸い込むシュシュをすると、心臓まで苦しくなるという。その旨内科に言ったら、「症状が半分になったのならそのまま続けましょう。」と言われ、少し不安だという。そのあと耳鼻咽喉科に行って内科の処方を見せたら、「あ、そう・・・。」といい顔をしなかったという。この状況でうちにこられたので少し話をした。「まず、耳鼻科の先生は『ゆっくり治しましょう。』と言うのですから、咳止めの強い処方していないはずです。喉を診ながら優しい処方で治るだろうと思って、少し通って頂ければ大丈夫と思っていたはずです。そのあとたった1週間で内科に行かれたことに内心、耳鼻科の先生は良い気持ちではないと思います。つぎに始めて行った内科の先生は、『耳鼻科でダメか、これは喘息の処方をして一気に治そう。』と思ったはずです。内科の処方が咳止めは出していなくてアレルギーと気管支拡張剤だけですから、そう思っていたと思います。処方箋を見ただけで医者の気持ちがわかります。2週間の処方で患者が半分になったというのですか、治療を続けて下さいというのは当然です。そこでちゃんと、『最近この気管支拡張剤を吸うと心臓が苦しいのですが、続けていいのでしようか?』とちゃんと聞けば、『では半分』とか、『辛いときだけ』と言ったはずです。こうなると今までの耳鼻科に行ってちゃんと訳を話すか、内科で再診を受けるか、さもなければ違う耳鼻科に行くか、そんな選択肢しかないと思います。内科に義理があるなら行かなければならないでしょうが、僕なら信頼できる耳鼻科で訳を話し、処方を診て頂き、内視鏡の結果で今後どうするかを決めます。実はこういう話はよくあるのです。医者と患者のすれ違いでよくこういう問題は起こります。」と説明したら、「そうなんです。内科の先生は喘息と決めつけているのです。私今まで喘息になったことはありません。」と言う。これは「我慢できない患者と医者の思い込み」によってよく起こる問題で、今後もなくならないと思う。