名人の治療を見て
昔まだ新人だった頃、名人と言われる方の治療を見て、「先生、そのツボは○○ですね。」また、「そこに鍼を打つのは△△だからですね。」と知識だけはあったので、自分なりに理解していたつもりでいた。しかし先生は、「やっている姿を見て、○○のツボというのは鍼の免許を持っている人間なら誰でもわかる。しかしなぜ、このタイミングでそこのツボを使うかがわからないだろう。それは見ても全くわからないはずだ。」と教えて戴いた。この言葉は今になると心に響く。ただ単に病気の時に、何処何処のツボに鍼を刺せば良いというものではない。いくら本から学んでも「風邪の時は○○のツボ」とは書いてあるが、その患者の病態まで詳細は書いていない。複雑すぎて書けないのである。今はなればわかるが、昔○○のツボがいいと学んでやってみたが、ことごとく成績が悪かったことを鮮明に覚えている。当時見ていたのは名人の治療の使っていたツボだけで、患者の病態を理解していたわけではない。プロになれば鍼1本打つのでも、非常に悩みながら考えながらやっている。新人にはそれがわからない。今はなれば当時は失礼な事を言ったと思うが、すべて未熟だからでる。今から思うとそういう名人の先生の治療を見られて、同じ空気を吸い、時間を過ごせたことをとても懐かしくありがたく思う。