お前に言ってもわからないよ。とにかく遠くからやれ。

これは大分昔の話だが、当時鍼灸免許取り立てで、ビギナーズラックも手伝い面白いように患者を治せていた。
しかしある時期からパタリと治療効果がなくなり、かなり長い期間師匠もいないまま悶々としていた。
時々セミナーなどで教わるが、どうしても通り一遍のことなので治療の核になる話は聞けない。
ある時少し仲良くなった先輩に、「先生、治療効果が上がらなくて困っています。解決法を指導して下さい。」と言ったら、「お前に言ってもわからないよ。とにかく遠くからやれ。」と言われて、何のことか良くわからないながらに実験をしてみた。
まず肩の痛みの患者に遠いところからと言われたので脛をいじってみた。
それも反対側(左肩なら右の脛)。
こっちとしたら肩の痛みを脛で取れるのか疑問だったので、恐る恐る患者に聞いたら、「何かいいみたい。」と言う。勢いに乗って反対の脛もやって聞いたら、「違う違う、効いている。」と言う。ほんまかいなぁと思いながら、数をこなしていくうちにいくつかの事に気がついた。

1.痛がっている患部は炎症があるのだから、出来れば触わらない方がいい。
2.反対側や遠隔で治療が出来ればそれが1番良い。
3.患部の痛みはそこが悪いから出ているわけではなく、他の部分の反射が殆どである。

色々と気がついていくうちに、先輩の指導して頂いた内容がわかってきた。
当院は腰が痛いと言ってもいきなり患部は治療をしない。
周りの環境を見て、それを改善してどれくらい良くなるかを見てからでないと患部は治療しない。
よく患者さんから、「○○の所で患部をガンガンやられてその後酷くなった。」と聞くが、このやり方には感心しない。
先輩のアドバイスがようやく理解出来る年齢になったので、患者にも最近は同じ事を言い始めた。