会長のご接待での苦労

仕事柄、ある業界の会長を治療することがある。その会長からよく、「今月は全国の支店周りなんだけど、一周すると体重が4-5kg増えてまた腰が痛くなる。今のうちに少しでも楽にしておきたい。」という話しが出る。地方に行けば必ず接待される。支店長や関係者が出てきて、飛行場や駅までお迎え、そのまま昼なら軽くそば程度だが、夜になると、「会長のために特別に○○を用意しました。是非味わって下さい。」と言われ、残すわけにもいかないので全部食べる。会長に、「夜も本当にそばでいいと言えばいいじゃないですか。」と言ったら、会長が「支店の連中も楽しみにしている。僕が行けばゴルフや美味しいものを味わえる。彼らのためにやっているようなものだ。」と言う。これには成る程なぁと思った。翌朝はゴルフで、これなら少し歩けると思っても、「会長のためにお疲れにならないようにカートを用意しました。」と言われてしかたなく乗る。また夜には、「これは地元の名産でこの時期しか食べられません。是非召し上がって頂きたい。」と言われ、また残さず食べる。そんな生活で全国の支店を10ヶ所ぐらい回れば、当然太り腰が痛くなる。接待する方は、「会長にはこれを・・・。」失礼のないようにと思っても、毎回接待される会長にしてみたら、「夜だってそばで良いのに・・・。」と思っている。病院勤務時代に院長がよく接待されて、昼に食べる患者さんと同じ病院食を、「美味しい、美味しい。この煮物が良い。」と言っていた。当時は皆で、「院長ばかりいいものを毎晩食べて・・・。」と言う感じで見ていたが、今になると院長は大変だったのだと思う。たしか糖尿病が全然良くならず困っていた。接待する方は会長に一言、「毎晩、ご接待続きで大変でしょうから、どんなものがいいですか?」と聞いてあげれば、「軽いものにしてくれ。焼き鳥なんか良いなぁ。」という話になる。聞かなければ、焼き鳥屋さんなんがで接待は出来ない、高級フレンチのフルコースとなってしまう。以前ある会長が夜の接待で、とろろそばをご馳走になって、「接待続きで胃がおかしくなりかけていたので本当に助かった。」と言っていたそうである。人の上に立つと見えないところに苦労がある。