敢えてお灸をしない話

常連さんがマラソンに出て、少しアップダウンがきついコースだったせいか走った後、右のお尻が痛むという。場所は典型的な坐骨神経の通り道なので、「定番ですね。」と解説した。しかしこの方は以前から逆の左坐骨神経痛(原因は過食)で通われていた方なので、気になって身体を診たら、左の太腿の前後しか硬くなっていない。痛がる右足は何ともない。これは「左脚への負担が限界を超え、反対の右側にまで溢れていって起こった神経痛」と判断した。だから治療法は左脚だけ治せばいい。前回の治療で左脚だけ治療して、本日診たら硬さが半分になっている。当然右の辛さも半分である。こんな時、右の坐骨神経にお灸をするとほぼ取れるのだが、敢えてしないことを宣言した。理由は、「左が原因の場合、この状態で右にお灸をしてしまうと必ず楽になり、そのあと必ず無理をします。しかし左が完治していませんから、再発は間違いありません。その時に右が楽になったと負担をかけられては、再発時にかなり辛い症状が起こってしまいます。ゆっくりでもいいから、左を治すまで、右はこのままの方がいいと思います。だからお灸はしません。」と説明した。患者さんは「なるほどね。」と言っていた。