猿がバナナから手を離さない話

常連さんが新しい仕事に取り組みうまくいかず、身体を診ると五里霧中の状態が良くわかる。こういう時は身体の末端が硬くなるから、腕と脛、その状態が続くと首肩や腰までおかしいと言ってくる。硬さから判断して1.5年ぐらい経っているので、かなりなものだと思う。「まだまだトンネルの先に灯りが見えないでしょう?」と言ったら、「う-ん、そうね、見えていない。」と言う。まるで夜間飛行をしていて、暗闇の中飛んでいて、目的地も見えず、方向と高度、速度は良いのだが、内心では大丈夫かなぁと思っている状態である。こういう場合、どうするかをある社長から以前教えて戴いた。「猿を捕まえる場合、ガラスのボールに猿の手がギリギリ入る穴を開けておく。中にバナナを入れて仕掛ける。猿はバナナが欲しいから、穴から手を突っ込んでバナナを掴む。しかしバナナを掴むと手が抜けない。脇から見れば手を離せば捕まらずにすむのに、手を離さない愚かさがある。人間も同じで答えが出ないときは少しその場から離れたり、距離や時間を置くことである。そうすると見えてくるものがある。何時までもしっかり握り続けるのが1番ダメ。」この話には唸ってしまった。こういう時に我々が治療家としてアドバイスできるとすれば、「身体絶対主義」である。患者の心はわからないが、身体を楽にすれば少し見えてくるものがある。すこし手を離し、身体をまず楽にすることが最大の近道である。