病状が変化しないのは良いこと?
先日病院研修をしていたら、肺がんの疑いのある方が、「ここ何年もCTで肺を調べて影が変化しないのです。他の先生は『変化しないから大丈夫。』と言ってくれて安心しています。」と言ったら、師匠が「それは違う。本当にがんでなくて肺の炎症性ならもっと薄くなって消えるているはず。何年もそのまま残っているというのはがんを疑わざるを得ない。呼吸器の専門の先生も『肺がんの可能性を否定できない』と診断されている。だからサイズや影が変わらないのは安心しないで、ちゃんと経過観察をしないとダメ。」と指導していた。これには唸ってしまった。患者さんの中には毎年調べて変化しないことを、安心材料にしている方は多いのではないだろうか。しかしがんばかり扱っていると、こちらが手を緩めるとすぐに増殖されてしまうので気が抜けない。よくテレビでもほんの少し検査をしなかっただけで、末期がんになってしまったという話を聞くが、それががんがはびこっている理由である。人の身体は常に変化していて、どんな環境にも適応し、自然治癒率も高い。しかしその身体をもってしても病状が変化しないというのは、やはり病気の勢いがあると言わざるを得ない。年を取れば取るだけ免疫が下がり、がんの増殖を許してしまう。病状が変化しないのは闘っていて均衡が取れているだけで、こちらの免疫が下がればやられてしまうと認識した方が良さそうである。