患者の尺度
これは以前、近所のスナックのママさんが珍しく昼頃治療に来て、顔が赤かったので、「あれ、昼から飲んでいるの?」と聞いたら、「全く飲んでいない。」と言う。でも「顔が赤いですよ。」と言ったら、「全く飲んでいない、ビール2本。」と言った。本人にとってはビール2本は飲んでいるうちにはいらない。10本ぐらい飲めば飲んだというのかもしれないが、これが本人の尺度である。今日来た常連さんも前回絶好調だったのに、その後ぎっくり腰をやったという。何をやったのか聞いたら、余り思い当たる節がないと言う。体を診たら、胃炎である。胃の反応は左腰に出るので聞いたら、「左の腰が痛かった。」と言う。胃に関して聞いたら、ほんの少々食べ過ぎがあるぐらいだが、たいした量ではないという。ここは皆さんが間違える所だが、いつもは胃の器が10で5割増しの15食べれば体を壊す事は理解して戴ける。しかし身体は量で音を上げるだけではなく、スイッチ論が働く。体調が良いと18程度でも文句を言わないが、体調が悪いと12ぐらいでも文句を言う。本人はそれほど負担をかけていないと言うが、本当のことは身体に聞かないとわからない。このギャップで体調を壊す。本人は「そんなに負担をかけていないのにどうして腰が痛いのかしら。」と言うが、身体は「こんなに調子が悪い時に10こなすだけでも大変なのに、12入れるとは何事であるか。少し腰に痛みを出して本人に気がついてもらおう。」となる。しかし本人はそんなに悪いことをしている自覚がないので、我々の前では、「特別なことは何もしていない。」となる。何年やっていてもこのギャップは埋まらない。最終的には身体に従うしか生きる道はないのだがといつも思っている。