レントゲンでは異常がない

この仕事をしていると、「レントゲンを撮っても異常がないと言われるんです。」とよく言われる。
腰痛、膝痛、首の痛みなど確かにレントゲンだけの診断では、原因を確定しにくい。
病院にMRIがあり、詳細が分かればもう少し原因特定できるのだろうが、必ずMRIを撮ってくれるわけではない。
最近では整形外科の領域でよく、超音波診断装置を使っている。
当院でももう導入して数年経つが、現実問題、超音波診断装置だけで原因が特定できるわけでもない。
結局、問診して原因を予測して、触って、検査結果を見て、考えて、仮定(○○が関わっていると思われるから△△がおかしくなっている)をして、検証して確かめてという工程を踏むことになる。
最近は整形外科領域であまり今まで見向きもされなかったファシア(筋膜)や脂肪組織の話がよく出る。
今までは骨や筋肉、腱がどうしたという話ばかりだったが、そこを治療して痛みが取れないから周辺の組織にまで目を向けるようになった。
段々調べていくうちに筋肉を包む膜や脂肪に大きな機能が隠れていたことに研究者は驚き、ここ数年で急速に眼が向けられるようになってきた。
私自身、以前解剖を学ばせて頂いた時は、早く筋肉や血管をみたいので「脂肪」や「筋膜」を邪魔者扱いしていたが、そこに痛みに関してヒントがあるとは夢にも思わなかった。
またNHKなども「筋膜リリース」を特集したり、学会活動も活発である。
しかしこの「筋膜」と「脂肪」、どちらもレントゲンに写らない。
今後は痛みの原因はレントゲンに写らない組織ばかりなので、「レントゲンでは異常がない」が益々増えるであろう。
やがて患者が、「レントゲンに写らない所に痛みの原因があるのではないですか?」と先生に言う時期は近いと思う。