触らない治療

最近は病気の説明ばかりで患者に触らないうちに時間が来てしまうことが多い。

「乳がんの治療をしていて最近は鬱病っぽいのですが、どうしたら良いでしょうか?」
「中々やる気がなく休職中で飲み薬に効果を感じないのですが、どうしたら良いでしょうか?」
「よそで腰に鍼を打ってもらって7割は治ったのですが、残り3割がどうやっても取れません。」
「足の付け根が痛く、医者に言うと酷くなってから手術としか言われないのですが・・・」
「昔痛めた手首が時々まだ痛み、最近は肩まで痛みが登ってきてしまったのですが・・・」
「便秘が良くなったり、悪化したりで下剤をあまりかけたくないのですが・・・」
「単発的に頭痛が起こり、薬を飲もうとする時には治まってしまうのですが対処法は?」
「子供を抱っこしすぎて眩暈が起こるのですが、何処を治療したら良いですか」
「医者で調べても何も出ないのですが、眠気が取れません」
「この婦人科の症状、医者に行かなくてもいいのではないかと思っている」

これらは全て最近聞かれた内容である。いくつかまとめて見ると患者の悩みは、下記の通りにまとめられる。

  1. どういう病気なのか分からない
  2. 何処に行ったらいいか分からない
  3. 何が原因が分からない
  4. どう対処したらいいか分からない
  5. 治療が必要なのかどうか分からない

最近はこれらの質問に答えているだけで時間になってしまう。
こういう話を聞く度に、「子供の頃から病気を学ぶ機会が全くない」と思ってしまう。小学生の時に、肝臓・心臓・血管は習うが、実際の病気に関しては教えてくれない。病弱であれば医者通いになるのでそれなりに知識が身につくが、お産以外入院したことがない方の場合は、咳一つ長引いても不安なってしまう。ましてや自分のことならまだしも子供となると親の不安は大きい。そんな経験を何十年もしているので、現在当院のホームページは「部位別」「症状別」「フリーワード検索」など、気になる言葉を入れて頂ければ、関係資料が出るようになっている。先日も常連さんが、「ビオフェルミンを飲んで少し便秘になって不安だから、おたくで『ビオフェルミン 便秘』で調べてみたらピッタリの記事があったので安心した」と言っていた。病気は悩む時間は短い方がいい。多くの方は我慢強いのか、相当長い間悩んでいる。毎回そういう方を診る度毎に、「日本人のDNAの中に、『耐え忍ぶことは美徳』が確実に入っている」と感じている。私などは職業的ということはあるが、すぐに解決しないとなんかスッキリしない。たっぷり悩むことが好きな方達には新しい生き方かもしれないが、専門家に聞けば一言で終わってしまうような悩みばかりである。最近はLINE@というのを使って、皆さんの悩みをいかに短くするかをやっているが、当院に来たことがない方まで指導している。もちろん身体を診ていないので限界はあるが、そういう方達の話を聞く度毎に、日本人は病気に関して悩み方は下手である。