握力と寿命

今日来た83才の常連さんが、「最近はコロナで外に出ることも少なくなった。家でゴロゴロしていて、昔みたいに床の雑巾掛けもないし、買い物も楽している。料理でカボチャは切らないし、ジャムの蓋が開けにくい。何となく調子が悪いと感じるけど何故かしら。」と言うので、「以前厚労省が『握力の経年低下が大きいほど総死亡、循環器死亡、およびその他の死亡リスクが有意に上昇』というのを発表したことがありました。我々が患者さんを見ていて、雑巾が絞れないとか、蓋が開けられない、荷物を長い時間持てないなどは典型的な握力不足だと思っています。この握力が体調のバロメーターといってもいいです。われわれがやっているBi-Digital O-Ring Testも『頭の血流と指の握力』を応用したものです。握力がないということは頭の血流もよくありません。それが総死亡数にも影響あるのですから怖いです。だから患者さんには『適度に手を使う必要性』を説いています。使いすぎれば肩や首を痛めますが、楽しすぎるというのは困ります。女性なら料理で少し硬いものを切るとか、短い時間だけ荷物を持つとか、土いじりとか、植木とかか、雑巾を絞るだけでもいいです。大体80才を超えて握力が15kgを切るのは少し鍛えた方がいいです。大体患者さんを見ていて握力が7kgを切るとお茶碗を落とします。この握力、皆さんが考えているよりとても大事ですので、日々の生活の中で少しだけ力むことをして下さい。力みすぎて血圧が上がるのは困りますが、短い時間でもいいので少しだけ手に力を入れることはとても大事です。」こんな話をしたら、「そんなに握力って大事なの。知らなかった。家に帰ってカボチャと雑巾掛けやろう。」と言っていた。ちなみにこの方の握力は15kgでギリギリでした。