考えるな、聞け
最近は患者が自分の症状に対して色々と珍説を言ってくることが多い。常連さんが「お尻が痛いのは筋肉が衰えたせいかもしれない。」というので調べてみたら、単に腰の状態が悪く坐骨神経痛を起こしていただけ。ガリガリに痩せた人が言うならまだ分かるが、中肉中背の方の場合は、初めに坐骨神経痛を疑う。患者をこのままにしておいたら、「筋トレのためにジムに申し込まなければ・・・。」となって、おそらく通っても治らないであろう。昨日来た方中年女性は、「何となく胸がスッキリしない。胃の働きも悪い。喉も詰まる。耳鼻咽喉科か胃腸科か、場合によっては心療内科、何処に行ったらいいか分からない。」と言う。この方は以前から拝見していたので、「それはまず心療内科です。薬が出たあと、喉と胸が治まればそれで終わり。胸が収まらなければ循環器、胃が治まらなければ胃腸科、しかし訴えている症状は自律神経失調症なので、おそらく治まると思います。医者に行く順番は大事です。」と言ったら、「色々と症状が出ると何処に行ったらいいか分からないし、何をやったらいいのかも悩む。話を聞いて頭がスッキリした。」と言っていた。ほぼ毎日こういう会話をしているので最近患者には、「考えるな、聞け」と言っている。患者は自分の持っている医学知識を総動員して想像力を働かせ、色々と考える。時には調べる。それで対策を構築するわけだが、我々から見ると土台から狂っている。信じられないぐらいトンチンカンな解決策を答えてくる。笑っては申し訳ないが、「そんな珍説があるのか。この道40年やっているが、初めてそういう説を聞いた。」と言いたくなる。患者の必死さは伝わるが、やはり治るにはルールがある。あまり珍説だけで治癒した話は聞かない。