パソコン病の思い出話
これは大分前の話だが、インターネットが発達し始めた頃、常連の外人さんが首が痛いと言って来た。話を聞くと、あまりの首の痛さに救急車で運ばれ調べたが、何も検査では引っかからず、痛み止めも全く効果がなかったという。そのあとうちに来られ首の治療をしたが、「no change 変化なし・痛みは変わらない」と言っていた。仕方がないので、「では次回いつもより多めに時間を取って下さい。全身診ますから」と言って帰し、詳しく調べたら、右の腕だけが異常に硬かった。何をやっているのか聞いたら、「インターネットが発達して金融の世界は24時間何処かのマーケットが開いている。お金をこっちからあっちに動かして利ざやを抜く。一瞬のクリックで大きなお金が動き、神経も使う。」と言う。全身拝見しても右腕しかやるところがないから、そこばかり治療していたら外人さんが、「less pain 少し楽」と言い始め、前回の治療では全く変化しなかった首の筋肉が緩み始め、治療が終わる頃には笑顔になっていた。さてここからが大変である。今ではパソコン病の事は「click disease クリック病・マウス病」というが、当時は分からない。お世話になっている大学に行って解剖学の教授に相談したら、「昔のパチンコなら親指ばかり使っていたから分かるけどクリックね・・・」と首をかしげる。そこから腕の解剖を学びわかったことは、「親指は単独腱を持っているが、人差し指から小指までは共同腱。だから人差し指のみ使うと共同の部分でかなりの摩擦で炎症が起こる」事がわかり、当時windows(Macの方は当時人差し指のみ使うという操作ではなかった。)の方ばかりパソコン病を言っていた理由が分かった。この腕の炎症がすべて首や肩に飛ぶ。腕は自覚が出ないから簡単に肩や首がおかしくなる。理由が分かってしまえば当たり前の話だが、この謎が解けた時の喜びは大きかった。相変わらずパソコン病の方は多いが、酷い方には必ずこの話をする。