身体が一番嫌うこと
先日患者さんから、「何が一番身体には悪いのですか?」と聞かれ、「過酷と過食です」と答えた。
日本人の遺伝子の中に、「つらかったけどよく弱音を吐かずに頑張った」という美意識がある。
以前、相撲の貴乃花が優勝決定戦の時に膝に怪我していたが痛みに耐え武蔵丸を投げ飛ばした。その時は鬼の形相で記憶に残っている方も多いと思う。優勝杯を小泉総理から渡されるときに、「痛みに耐えよく頑張った。感動した」という場面があったが、日本人はこれが大好きである。
これは良い悪いの話ではなく、我慢強く黙って耐える事が素晴らしいという価値観が日本人の中に入っているわけである。
しかし身体はこれを嫌う。私から見ると貴乃花はこれで相撲人生が終わってしまった。
これが「過酷」である。
身体は我慢し続けると必ず壊れる。
次に「過食」だが、現代社会では栄養失調の人はいないので、食べて健康になる方法などない。
食べないで胃腸を休ませてあげる方が余程いい。
食べすぎてお腹の満足度はあるかもしれないが、医者に行けばコレステロールや中性脂肪、血圧に血糖値が高いと言われてしまう。
お笑いのさんまさんがテレビで言っていたが、「僕はいつも腹五分、食べすぎると面白いネタが浮かばなくなるから」
これは過食で頭が働かないことを意味している。頭だけではない。免疫から循環器まですべてに負担がかかる。
動物が怪我をした時は動かず食べずで寝ている。
傷の回復に体力の全てを注ぐためである。
以前、患者に、「私のこの腰痛、食べて患部に栄養を送らなければ・・・」と言われ、危うくだまされそうになったが、これは間違いである。食べれば胃腸にばかり血が行ってしまい腰の修復になど回らない。胃腸に血が行けば腹筋など働かないので、余計に腰に負担がかかる。
どんな時も、「適度な休みを取り無理をしない」と「食べ過ぎと思ったら食を減らす」さえ実行して頂ければ身体はすぐに元に戻ろうとする。そんなに難しい話はしていないと思う。