患者さんの不安は情報不足が原因

常連さんが今回、股関節の人工関節置換術を受けることなった。この方は2年ほど前から腰痛が悪化し、今までのように治療しても楽にならなくなり、これは一度調べてくださいということで検査の結果、中等度の変形性股関節症がわかった。本人は何とか手術をしない方向で考えていて、私の「大丈夫です。手術しなくても何とかします。」という言葉を期待していたようだが、痛みが段々酷くなるにつれ、私が「これは手術以外方法がありません。」と毎回言うものだから、少しずつ覚悟をしていった。病院や手術日が決まり色々と細かい話をしていたら、「患者さんの不安は情報不足が原因」ということに気がついた。「僕は長いことこの業界にいるので昔の股関節の置換術なんていったらそれは大変でした。まず1週間ぐらいは術後安静だし、リハの開始は大体2週間後、入院だって2ヶ月以上になる方は一杯いました。でも今は機械が正確に補助をしてくれるので、早ければ2-3日で立つ訓練をします。入院期間も短いです。今は股関節両側同時手術も出来るぐらいです。何故こういう事が出来るかというとこれは医学工学や技術力のお陰げです。白内障の手術も昔は入院でしたが今は15分ほどで終わり日帰り、心臓の狭心症の手術も腕からステントを入れて終わり、脳の動脈瘤も昔は開けましたが今はコイルを入れて終わり、腰椎椎間板ヘルニアも昔は開けましたが、今は内視鏡で終わり、胃や胆石だって内視鏡で出来る時代です。我々の世界で今は超音波診断装置を使って中を見ながら鍼を打っていますが、昔はすべて勘でやっていました。妊婦さんの検診だって超音波で赤ちゃんの顔まで見られます。やがてはこちらの欲しい情報がすべて可視化できます。この進化は止まりません。僕の感覚ですと股関節の手術は難しい奥歯を抜くぐらいの感覚です。一般の方に『股関節の人工関節と奥歯を抜くのはどっちがいいですか?』と聞けば、殆どの方が『奥歯』と言うでしょう。僕から見たらそんなに差はない感覚です。安心して手術を受けられ、年末にはもう旅行の計画を立てて頂いていいです。」とこんな説明をしたら、「昔とそんなに違うのですか?聞いて安心しました。」と言っていた。技術が日進月歩で進んでいく中、新しい技術には目を見張るものがある。