言葉が野蛮な医療
久しぶりに来た90才のお年寄りに、「最近健康診断をしていないなら、一度受けて下さい。その後で血液を持ってきて下さい。」といつもの口調で言ったら、「病院に行って血液を持って帰りたいと言ったら断られてもってこれなかった。」と連絡があり、こちらは焦ってしまった。もちろん血液というのは採血結果のデータのことなのだが、殆ど医者にかかったことがない方が真面目にこちらの言葉の通り受け取ってしまうとこういう事が起こり反省をした。以前も、「これはCTで首と腰を切ってもらって下さい。」と言ったら、「それはかなり痛いのですか?」と聞かれて、我々が当たり前に使っている言葉が一般的でないことを知った。整形の領域ではよく、「骨切り術」があるが、これもどうも患者さんにしてみると、「骨切り?のこぎりで切るのですか?」となってしまう。骨切りは顎でも膝でもとても良く行われている術式だが、どうもこの言葉に違和感があるらしい。野蛮な印象を受けるのであろう。CTも丁寧に、「首と腰の詳細な情報が欲しいので、CTで撮影してきて戴きたい。」と言えばいいのだろうが、業界では「切る」という言葉で定着している。「骨切り」も「骨整形」とか言えば良いのだろうが、「骨切り」で通っている。この業界中々閉鎖的なところがあるので、昔ながらの言葉がそのまま生きているが、少し手直ししてもいい時代に来ているかもしれない。