お年寄りと時間感覚

昔読んだ本に、「年をとると時間の感覚が変わる」と書いてあった。
何かやる時の感覚は下記の通りである。

10代は30分以内に出来れば
20代は1時間以内に出来れば
30代は午前中に出来れば
40代は今日中に出来れば
50代は今週中に出来れば
60代は今月中に出来れば
70代は2-3ヶ月の内に出来れば
80代は今年中に出来れば

となる。これは成る程と思った。だからお年寄りが何かしたい場合、「○○がしたい」と言って若い方が「じゃすぐやろう」と反応しても、「いやいやもう少ししてからでいい」と言われてしまう。80代なら「それは今年中に何とかなればいい」と思っていて、最悪出来なくても何とも思わない。若い方はそんな感覚がないから、お年寄りは疲れてしまう。
お年寄りに育てられた方はその時間感覚が身についているので少しのんびりしている。おばあちゃんが、「今度は○○を買いに行こうと思っている」と言っても、「そうですね、じゃ今度」と言って実現するのは数ヶ月先のことである。場合によっては忘れている。こんな感覚で生きている。お年寄りにはお年寄りの時間感覚がある。私なども少しせっかちの所があるから母親に、「それが欲しいならすぐに買いに行こう」と言うと、「そんなにすぐに行かなくてもいい、手が空いた時でいい」と言われ、「今、手が空いている」と言うと、「後でいい」と言われる。「じゃ来週?」と聞くと、「もっと後でもいい。そんなに急がない」と言われてしまう。そして最後に、「お前といるとせっつかれるみたいで、せわしなくて落ち着かない」と必ず言われてしまう。これなどは典型的にこちらがお年寄りの時間感覚を理解していないために起こる。お年寄りは自分の時間感覚を早く出来ないから我々が合わせるしかないが、親ともなるとこちらもイライラしてしまう。この話を書きながら、以前青山の奥様から、「私の膝はもう長患いなのだからそんなに急いで治さなくてもいい。いくらでも通うからゆっくりやって頂戴」と言われたことを思い出した。最近は少しだけその気持ちがわかるようになってきた。