辛い時の患者心理

以前、腰痛患者が治療しても全然痛みが取れず1時間の予約が、もう少しやってくれということで2時間になり、まだ楽にならないということでついに3時間治療した事があった。患者に聞くと痛みを感じないのは手が触れている時だけで、 手が離れてしまうとまた痛みを感じるという。これは私自身も経験がある。以前肩から手を痛めた時に刺激している時は楽なのだが、同じように手が離れてしまうと辛い。少し強めの刺激をしても場所を変えてもやはり手やマッサージ器が離れてしまうと駄目である。こうなると職業人として何をすればいいかはわかっている。自分で鍼をするかと割り切って、指の間に鍼を深く刺したら翌日には嘘のように痛みと重だるさが消えていた。こんなに鍼は効くのかと改めてビックリした記憶がある。しかし患者さんにしてみたら触ってもらっている時だけ楽なのだから、ずっと触っていて欲しいとなる。これを思うと昔の方は本当に苦痛を我慢するしかなかったから、今の我々では想像できないレベルの辛さに耐えていたのだと思う。時々時代劇を見るが、冷暖房もなく、衛生環境も良くなく、移動は全て足、お金がなくて医者にかかれないのは当たり前、鎮痛剤もなければ、抗生剤も麻酔もない。あるのは漢方薬や生薬ぐらい。江戸時代の平均寿命は30才~40才だったそうだが、特記すべきは乳幼児の死亡率の高さで、「7歳までは神のうち」といわれたそうである。そして伝染病の蔓延、天然痘、麻疹、コレラなども手が打てない。祈祷だけである。怪我をしても感染してもそのまま亡くなっていたであろう。やがてもっと医学が発達すると痛みや苦痛と無縁の時代がくる。先日、産婦人科学会のセミナーを受けていたら、「薬を使って女性の生理痛をゼロにしたい。エルペインがある。」と言っていたが、もう痛みに関してはそういう時代に入っている。