比べると大したことはない

膝痛の常連さんが、「通ってもすぐまた痛くなる」とぼやく。気持ちは分かるが、しかしよく考えると膝痛で良かったと思ってしまう。例えば「食べられないのと膝痛はどちらがいいですか?」と聞かれれば、殆どの方は「膝痛」と言うだろう。「お通じがないのと膝痛は?」と聞けば、やはり「膝痛」と言うだろう。「頭痛と膝痛は?」と聞けばおそらく、「膝痛」であろう。確かに膝は痛いかもしれないが、胃腸がちゃんと動き、ご飯も美味し、ちゃんと寝られ、手足が動き、頭痛もなければ、「単に膝が悪いだけで大したことはない」と言いたくなってしまう。確かに慢性膝痛の方は、「とても大変」というが、仕事柄もっと大変な方を毎日沢山診ている。今回私が脊柱管狭窄症を患い、足が辛いと言っているが、よく考えると、胃腸はちゃん動くし、ご飯やお酒は美味しいし、夜は寝られるし、足以外は何の問題もない。身体が辛い時はそこばかりに目が向くが、全体で見るとほんの一ヶ所だけ辛いだけで他はちゃんと動いている。ちゃんと動いてくれている感謝を忘れ、辛い辛いという気持ちは分かるが、冷静に考えると身体の機能が駄目になってしまったわけではないので、大したことはないと思ってしまう。世の中を見ればもっと辛い症状の方は山ほどいる。その方と自分を比べて、「この程度で本当に良かった」と思えれば、こんなに有り難いことはない。患者の中には不幸自慢をする方は多いが、「膝は辛いけど他は何ともない」という「感謝・幸福自慢」をする方は殆どいない。少し「不幸自慢」の反対語「感謝・幸福自慢」を流行らせないといけない。