発熱と膿吐き出し
仕事が極端に忙しくなると時々熱を出す方がいる。本人は、「こんな時、熱を出している場合ではない。」と思っているだろうが、我々から診ると、「発熱して本当に良かった」と言いたくなってしまう。まず発熱は感染などで身体に侵入した細菌やウィルスなど(両方とも熱に弱い)をやっつけるために身体が自ら熱を作り出す。熱を出せるという事は体力がある証拠で悪い事ではない。最近は何でもすぐに解熱剤の話になってしまうが、余程、体力が衰えていたり、酷い感染以外は、そのまま発熱させておけばいいと思ってしまう。但し、お年寄りは危険な場合があるので、全員には当てはまらない。ではこの発熱が起こると体はどんな反応をするのだろうか?本来人間の体温は恒常性と言ってどんな状況でも一定に保たれている。寒ければ身体を動かして発熱しようとするし、暑ければ汗をかいて気化熱で体温を下げようとする。実に優れた機能がある。では激務の時の発熱はどう考えたらいいのだろうか。私は「膿吐き出し」と考えている。休みも取れないぐらい忙しく、睡眠も十分に取れない中、過緊張が続くと当然免疫は下がるし、感染に対しても弱くなる。そんな時に発熱したのでは仕事は休まざるをえない。しかしこれは身体が「休め」と言っていて、「今から熱を出して、感染対策を強化する。そして過緊張も取ってあげる。熱か下がった後は体中の膿を吐き出す。必ず楽になるから、おとなしく休め。」と言っているのである。だから患者さんの中には、「先週は熱があって仕事にならなかったが、熱が下がったらなんかスッキリした。」と言う方は多い。この身体の仕組みがわかると、発熱しても慌てることはない。ゆっくり休んで、後は時間が解決してくる。ただし、全ての発熱をほったらかしでいいと言っているわけではない。膀胱炎などはすぐに抗生剤で対応した方がいい。あくまで激務で発熱した時の話である。この有り難い仕組みを無視して解熱剤だけで対応するのはどうかと思ってしまう。