先生を追いかける話

腰の脊椎を手術した年配の方が最近よく来ている。手術したところはうまくいって痛みもなくなったそうだが、その上の部分が良くないので、今度腰痛が悪化したらそこを切ると言われているという。本人はもう手術は受けたくないので、何とか鍼でしのぎたいと言う。話を聞いたら、手術した先生は少し遠いところに行ってしまい、追いかけなかったという。この話を聞いて、「貴方の腰の場合は先生を追いかけるべきです。外国に行ってしまったなら仕方がないですが、そんな遠くないのならその先生とのお付き合いは一生ものです。患者さんは手術を1回したらそれで終わりと思っていますが、我々からすると手術をした後が大事で、いくらでも2回目はあると思っています。そして担当医は手術をした時のことはちゃんと覚えています。『この患者、骨が硬かった』『膜がくっついていた』『神経の通り道が狭かった』など覚えています。再手術の場合、その知識と実際に診た先生ならきっとうまくやってくれて、2度目の手術も成功するはずです。『前回はこの人は○○だったなぁ』と言いながら上手にやってくれます。で、その先生は何処に行ったのですか?」と話をして聞いたら、「山手線で30分ぐらいの所」と言う。本人は2度目の手術はないと思っているし、今診てもらっている先生も腰が専門だという。気持ちは分かるが、私なら先生を追いかける。本人は「大腸がんは同じ先生に診てもらっている」と言う。しかし大腸がんは手術が終わっているのならどの先生でも余り変わりはないと思ってしまう。ちょっとした事だが、こんな所にもいい医療を受けるコツがある。