ここが落とし穴-アイシングは逆効果?
以前から、「ぎっくり腰は炎症だから患部を冷やしてお風呂で暖めてはダメ。」と言われていた。
しかし段々とぎっくり腰の時にお風呂に入ると楽になるという報告が続き、私自身どちらが正解なのかわからずにいた。
そんな時にタイミング良く私が酷いぎっくり腰になってしまい、絶好の検証する機会を得た。
お風呂まで這っていき、恐る恐る身体を温める。それも十分温まるまで。
15分か20分ぐらいしたところで恐る恐る立ってみたら、すっと立てる。
「あれ、痛くない!!!」と実験は見事に成功。こんなに効くとは思っていなかったから、これには驚いてしまった。
次の瞬間、当院のホームページに記載されている「ぎっくり腰はお風呂禁止」を全て、「お風呂で温めなさい」に書き換えた。
理屈で考えるとぎっくり腰は筋膜炎なので、冷やすのは正解なのだが、痛みに耐えている間に身体全体が過緊張になってしまい、それが又腰に悪い影響を与えていることが段々わかってきた。
医学会では論文が1本通るだけで、全く逆の治療法に変わってしまう。
骨折したら動かすなが動かせになり、リウマチは温めろが冷やせになり、脳卒中は2週間安静がすぐにリハになり、治療法が真逆になってしまう。
そんな経緯を長年見ていると、よくスポーツ選手が捻挫や肉離れで、アイシング、「RICE-(安静(Rest)冷却(Icing)圧迫(Compression)挙上(Elevation) 」と言っているが、これも最近は逆効果ということがわかってきた。
アイシングは痛みを軽減するのには役に立つが、再生に関する細胞が筋繊維の損傷部位に入るのを妨げ、回復を遅らせてしまうというと事がわかってきた。
同時に抗炎症薬も避けた方が良いという。
ただしこれは重篤な筋損傷のケースで、軽微な筋損傷の場合は変わるか可能があるという。
今後研究が進めばその辺のところもはっきりしてくると思う。
何が何でも冷やせば良いというのではなさそうである。
我々も経験的に、「冷やすのですか?暖めるのですか?」とよく聞かれるが、「やってみて楽な方」という言い方をしている。
またもや常識が覆された。
おそらく我々が当たり前に治療している中にも、研究したら間違っているものは多いだろう。
常識を疑う必要性を益々感じた論文だった。