ここが落とし穴-便秘と下剤
便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を言い、慢性便秘症診療ガイドラインでは、「週に3回程度の排便でも、腹部の膨満感や残便感などがなければ問題はない」とされている。
私などは親譲りで腸の調子はすこぶるよく、食べればすぐに出るが、女性で「3-4日に1度、酷ければ1週間出ない」方をよく診るが、按腹と言ってお腹のマッサージをするととても不快な顔をする。
「少し下剤でも試したら」と言って、お腹がスッキリした後のお腹はまるで別人で、「こんなにも腹圧が変わるのか、いつもスッキリさせておけばいいのに・・・」と思ってしまう。
便秘も酷ければどんどん下剤のレベルが上がり、それでも出なければ浣腸か掻き出しだが、高齢者の場合は無理矢理に浣腸をすると腸に穴が開いてしまい、緊急手術をしたなどとニュースになることがある。
便秘の患者さんが多いだけに、原因を調べずに下剤や浣腸は危険な場合がある。
特に投薬でも「抗コリン薬」「抗ヒスタミン薬」が入っている、かゆみ止めや鬱病、アレルギー、風邪薬、胃薬など腸の動きを止めてしまうものがある。これが薬剤性便秘だ。元の薬をやめればいいのだが、いつまでも飲み続けている方は結構いる。
下剤には「刺激性下剤」と「緩下剤 かんげざい」があり、「刺激性下剤」は腸を無理矢理動かして排便させるため、「しぶり腹」と言って腹痛を伴う。「センナ-アローゼン」「ラキソベロン」「コーラック」は有名だ。この薬を飲み続けると大腸に色素が沈着するので、内視鏡を受けた後に医者に言われる。「緩下剤」は便に水を含ませて、便を軟らかくするので腹痛を伴わない。だが薬だけ飲んでもダメで、必ず水が必要となる。「マグミット」などが有名でよく病院から処方される。
緩下剤は酸化マグネシウム製剤なので、腎臓の病気の人には注意が必要だ。また抗菌薬の薬効を妨げてしまうので、これも注意が必要だ。
下剤の長期服用で怖いのは、「低カリウム血症」と言って、腸が動かなくなったり、手足に力が入らなくなったり、不整脈を起こししてしまうことがある。治療はカリウムを取れば良いが、飲んでいる薬を全て担当医に説明すれば問題ないが、密かに飲んでいる場合は、問題が起こることがあるので注意が必要だ。