脳卒中のあとの顔面のシビレ
今日来た方は脳卒中の後、顔面のシビレが取れないという。話を聞くと倒れてからもう1年が経っていて、血をさらさらにする薬程度しか出ていないという。中々こういう顔面のシビレは病院は苦手である。では我々に何が出来るか思いつくままに書いてみたい。
- EAT(Bスポット療法)-これは上咽頭という鼻の奥に炎症があると免疫は下がるし、体力は上がらず、ウィルスが暴れやすくなってしまうので、鼻の自覚症状がない方でも一度診てもらう必要がある。
- マウスピース-これは歯ぎしりを治すではなく、顎関節を緩めるためである。全ての歯医者が顔面のシビレのためにマウスピースを作ってくれるわけではないが、顎関節が身体に与える影響を知っている先生なら作ってくれると思う。顔面のシビレは歯科が診るのかと言われると、脳神経内科や歯科やリハビリ科の隙間かもしれない。中々、顔面のシビレだけ診る科がないのは残念である。
- 低周波治療-これは家庭用の物もかなり安価で売られている。シビレの辛い患部と首や腕などにパッドを当て通電する。昔は病院でもやっていたが、最近はあまり見ない。
- 温灸・温熱-これはいくつか機材があり、顔に当てるローラーのようなものから、我々が本格的に使う温熱器など種類が多い。シビレがある所は虚血と言って血流が少ない場合が多いので、温めて改善することはよくある。逆に冬に自転車などで寒風吹きさらす中を走っては悪化する。
- コロコロローラー-我々は治療では鍼を刺すが、脳卒中の後のリハビリは自宅での治療がものを言う。我々に週に一度通って戴くよりも自宅で何度も何度も刺激した方がいい。そうなると鍼に似た刺激を患部に与えるといい。
- 蝶形骨-これは以前ブログに書いたので、見て頂きたい。蝶形骨をいじることで頭への血流を良くするのが目的である。
- 口の中を擦る-これは以前、歯科の先生に顔面神経麻痺の患者を送ったら、「口の何から粘膜を擦って刺激させなさい。」と指導を頂き、試したら成績が良かった。顔面のシビレでも効果があると思う。
- 荏胡麻と乳酸菌-これは今まで何度もブログを書いている。荏胡麻はウィルス対策。乳酸菌は腸を元気にしないと免疫は上がらない。
- ファシアハイドロリリース-これは「筋膜リリース」の方がなじみがあるかもしれない。患部に生理食塩水を注射して、膜を剥がしたり、脱水を改善したり、血流を上げる目的で注射をする。出来る先生がまだ少ないが、試す価値はある。私は良く日本整形内科学研究会会長の木村先生を紹介しているが、今までにない新しい方法を編み出し、効果を上げている。
こんな話をしたら、「1度も病院で聞いたことがない話ばかりだ。全部、東洋医学?」と聞くので、「EAT(Bスポット療法)は耳鼻科、マウスピースは歯科、低周波・温熱・コロコロは鍼灸、蝶形骨はオステオパシー、口の中は何科とは言いにくい、敢えて言うと口腔外科?、荏胡麻と乳酸菌は栄養学?、ファシアハイドロリリースは整形か麻酔科。長年やっているので、病院以外の治療ばかりです。中々これだけあるというのも知らないと思います。」と説明した。実際問題、我々みたいに病院で結果の出ない方を診る場合、ほんの少しの可能性も大事で、研究者の中には新たな治療法を求め、枠に囚われず探し求めている先生は多い。結局何が言いたいかというと、「脳卒中後、1年経って自力でシビレが治らないのは基礎体力、特に粘膜の状態がいいとは言えない。鼻や顎関節、腸をいじって基礎体力を上げ、患部を色々暖めたり、刺激して自力で回復出来る環境を作る。」ということである。そう言うことを何もせずに、いきなり患部に鍼を打ってうまくいったことは殆どない。昔は一生懸命、鍼を打っていたが、あまりの成績の悪さに原因を追求したら、基礎体力のなさや粘膜の状態、慢性炎症などが関わっていることがわかった。そういう基本的な事をしないで、患部に鍼を打つのは、まるで「家を建てるときに基礎をいい加減に作って柱を立てるようなもの」である。患者さんは顔に鍼を打ってもらいたいだろうが、効果は一時的なのでこういう場合打たないことにしている。