親の知恵
新米ママが子供に抱っこをせがまれ、肩を痛めている。気持ちは分からないでもないが、我々から見ると「親の知恵」が足りない。私なら、座って抱くのと立って抱くのでは身体に対する負担が全く違うから、抱っこで、「高い高いより、こうやって座ってみる景色が1番綺麗」と言うだろう。以前漫才の島田洋七が「がばいばあちゃん」を書いてベストセラーになったが、貧乏なおばあちゃんに育てられた洋七は、お腹がすいて訴えると、「気のせい」と言われたという。その後お腹が空きすぎて気持ち悪くなると、「何かの間違い」と言って納得はしないが反論出来なかったという。当然おばあちゃんもお金があれば、おやつでもあげたかったものを、貧乏でそう言うしかなかった。終いには、「川へ行け」と言われて行ったら、何か食べ物が流れてきたという。こういう体験をしてもやがて子供は大人になれば、その時のおばあちゃんの気持ちがわかる。常連さんで育ち盛りの子供を3人も抱えている人が、「回転寿司に行く前はうちは必ずラーメン屋に寄る」と言っていたが、子供が本気で寿司を食べると家族で数万円かかるそうである。これも知恵である。うちの田舎では、「ウニは子供が食べる物ではない。子供には苦すぎる」とか、「大トロは脂っこくて美味しくない」「1番美味しいのはカッパ」などと言われた記憶がある。これも大人の知恵である。親はその時にしてあげたくてもしてあげられないことがよくある。昔の人はそれを皆、知恵で乗り切った。昔我が家でも子供が塾に行きたいと言って、「塾で勉強なんかしなくてもいい。どうしても行きたければ自分でバイトをして行け」とか「大学院など行かなくてもいい。行きたければ自分で奨学金を借りて行け」と言ったが、「子供が勉強したいのに、させない親がどこにいる」と言われ、「ここにいる」と言った。勉強したい気持ちが本気なら、自分で努力をするはずである。それを親だけが我慢して我慢して、無理矢理通わせるのは少し違うと感じている。親心はわからないでもないが、それで親が身体を壊すのは違うと思う。昔に比べて日本は貧乏でなくなったから、親も知恵が出なくなったと最近感じている。