どこまで治りたいの?
最近、当院の常連さんが4人股関節の置換術をした。皆さんリハが順調でやれやれだが、以前同じ手術をした人が、体調が良く少し運動をしたいと自分で筋トレをして、股関節を痛めた事があった。以前も股関節の手術成績が良い事は書いたが、それはあくまで日常生活に支障がないレベルであり、手術した全員がマラソンなどの運動をやっていいという事にはならない。もしやりたいという希望があるなら、専門の理学療法士に指導を頂き、それなりの筋トレが必要である。手術をすると、「悪い所は治って自分は何でも出来る」と思っている方がいるが、それは少し違う。私なども去年、脊柱管狭窄症をやって、その後定期的なメンテのお陰で、日常生活と仕事に関しては全く支障がない。今からマラソンなどをやっても良い身体にして欲しいなどとは全く思っていない。時々趣味でバイクに乗るので、それがクリアできれば御の字である。また患者さんで首を痛めている方がいるが腕を使う仕事なので、ちゃんと検査をして今後どういう生活をしたいのかがわからないと治療法が変わってしまう。数年だけ首が痛くなければ良いのか、どんな事をやっても痛くない首を作るのかによって、全く治療法が異なる。患者は、「治して欲しい」と言うが、我々からしてみると、「どこまで?」と聞きたくなってしまう。理想的には短い治療期間で完治がいいのだろうが、身体に本音を聞いてみれば、「もう何十年も無理をしてきて、これだけ痛みを出しているのに、まだ負担をかける気?」と言うのではないだろうか。いつもプロのスポーツ選手を見ていて、本当に身体が以前のように戻らず、その不安はどれだけ大きいか想像しただけでも辛いものがある。それから比べれば、一般の方はまずは、「日常生活に支障がない」がどれだけ有り難いかわからない。