足の長さはただ揃えれば良いというものではない
病院勤務時代に交通事故で足を骨折をした方が、手術後、足の長さが3cm違ってしまった。当然装具を作る我々がリハをやるわけだが、初めは3cmを補う装具を作ったら患者から苦情がきた。「3cm補うのはわかるけど、実際履いてみると、歩きにくいし腰は痛いし、あれはダメだ。」と言う。それならということで2cm、1.5cmと実験をして結局、体調に合わせてこの2つを使い分けるという結論になった。機械なら左右差をなくすのは当たり前だが、人の身体は遊びというか、体の幅というか、あまりピッタリ作ってしまっては駄目なことがある。以前私が眼鏡屋さんで、「あまりピッタリ作ると目が疲れるから程々の視力のものを作って欲しい。」と言ったら、「とんでもありません。1番いい視力になるものしか作りません。」「1番いい視力は有り難いのだけど、長時間つけると疲れる。だから少し緩めて欲しい。」「いやいや視力というものはピッタリでないといけません。」と埒が明かない。結局昔作ったメガネを着けている。長時間、目を使うときは本当に見えすぎると疲れる。何でも程々である。以前、スキーをして骨折した子供の脚の長さが1.5cm違って親が心配していたが、「いやいやそんなに心配はいりません。これから成長期だし、普段の生活に全く影響ありません。」と言っても、「いや先生、1.5cmも違うのんですよ・・・。」と引かない。その後ある病院の専門家に診てもらったら、「大丈夫です。問題ありません。」で終わり。何でも揃えたいという親心はわかるが、体は、「許容範囲内」と言っている。その少年は部活で走ったり、何をやっても辛いと言わないという。骨折のことなどもう忘れている。