病態解釈
すこし難しい言葉だが、わかりやすく言えば「身体の中で何が起こっているのか?」ということである。膝痛一つ取っても「炎症性」「腱の問題」「半月板の問題」「筋肉の問題」「骨の問題」「血管の問題」では治療法が全く変わってしまう。今は昔に比べて関節の中が手に取るようにわかるので、いくつもの原因を考える必要はないが、では画像で痛みが把握できるかというと、実はそうではない。画像に問題がなくても痛がったり、骨などに問題があっても痛みを訴えない患者さんは多い。ではどうやって正しく病態解釈をすればいいのだろうか。画像所見も基本はひとつの参考に過ぎず、全てを表すことは出来ない。実際の臨床では、「関節を動かしたり」「熱をどれくらい持っているか調べたり」「荷重をかけると何処に痛みがあるかを調べたり」「関節の曲がり具合から推測したり」「ある方向にねじって痛みが出るかを調べたり」と意外とやっていることはアナログである。しかしこのアナログの検査を数こなしてくると、勿論経験数は大事だが、見えないはずの関節の中が段々見えてくるから不思議である。「この角度の荷重で痛がると言うことは○○といっていい」が分かってくる。そこまでわかると治療は簡単で、「では△△をしてみましょう」と実際にやってみて鎮痛すれば、大当たりとなる。結局中が見れないから、色々と想像を巡らし総合判断するのである。実はこれが楽しい。難しい患者ばかり診ている先生はよそから患者が回ってくると、「その先生はこれを見落としていましたねぇ」「こんな所に○○を見つけました」「これは今までのやり方では駄目で、△△で治ります」と鼻高々である。この病態解釈、私自信経験年数とともにレベルアップしてきた。お陰様で最近はあまり病気の原因に悩むことは少なくなってきた。原因が大体わかるから何をすればいいかが分かるのである。最近は患者にも「病態解釈」と言ってしまう、しかしうまく痛みが取れない場合など、「先生、別にも原因がありそうですね」と言う強者患者も当院にいる。まだまだこの世界、奥が深い。