昔その治療、効かなかったから・・・

患者さんとの会話で、「その痛みに対して○○というやり方はあります」と言うと、「昔、その治療やったけど効かなかったから・・・」と言われることがある。気持ちは分かるが、我々からすると人の身体は毎日変化していて、過去の常識がそのまま通用しないことはよく体験する。「現状から見て、昔はそうだったかもしれませんが、やる価値はありますよ」と言うと、余りいい顔をされない。薬でもそうだが、体調と時期があり、一度使って駄目だからといって、一生効かないという事はない。すると患者は、「期待はしていなかったけど、よく効いたことは事実・・・。なんかしっくりこない。」という反応である。健康食品などはまず効果は2週間ほど見て、止めてみる。1週間ほど休んでまた再開すると、本当に効いているどうかが良くわかる。昔ある治療が効かなかったには必ず理由がある。全てわかるわけではないが、その条件がひとつでも変われば効果も当然変わる。例えが良くないかもしれないが、昔大失恋をした人が「もう恋愛はしなし」と言っても、条件が揃えば気持ちが変わるのではないだろうか。子供の頃嫌いだった食べ物でも、大人になって美味しく感じるものは結構ある。「昔その治療、効かなかったから・・・」ということで試さなかったら、治療の幅を狭めてしまう。患者さんに理解してもらうのには時間はかかるが、何故その時効かなかったのかの理由を想像しながら解説して、今とは違うことを理解して戴ければ、昔の体験の中に宝は結構眠っているものである。