不良息子とがん
Bi-Digital O-Ring Testを長年やっているとがんの患者は多い。師匠が消化器のがん専門医なので、患者には必ずその話はしている。昔は「がんを殺す」という考え方が主流だったが、その後は「がんに伸びる血管を治療」する考え方になり、その後は「免疫チェックポイント」の考え方も出てきて、がん治療は大きく変わり、延命率も確実に上がっている。そんな状況ではあるが、がんにかかると半分の方は亡くなってしまうことは事実である。そんなやっかいな消えないがんとどう向き合うかは大きな課題となる。患者の話を聞きながらいつも感じることは、「がんとの付き合い方」である。以前から、「がんは消えない」と言っているが、消えないなら消えないなりの付き合い方がある。それは「がんを不良息子と思え」と言うことである。具体的には自分の息子が不良少年とする。親としてみたら、何とかしたいと思ってもこれが中々手強い。ちょっと諭したぐらいでは言うことを聞かない。悪い友達もすぐに作る。家庭内で暴れることもよくある。親としたら、「この子さえいなければ・・・」と思うが、殺すわけにもいかない。ではどうするか。「不良息子を観察する」のである。例えば、外で運動をしてきた後に比較的我が儘を言わないとか、食後はおとなしいとか、雨の日は暴れるとか、日曜日はいつも不機嫌とか、子供なりの特徴が必ずある。がんも同じで、基本は自分の細胞が変化したものだから、完全によそ者ではない。息子も自分の子なのだから身内である。だからよく観察して、暴れない方法を何年かかってもいいから見つけ出すことである。そうすれば、「不良息子はいるけど暴れない」がんで言えば、「がんはあるけど寿命全う」という戦略をとる。今まで色々な方のがんを診てきたが、がん(不良息子)に対して、「相手の特長を知り、いかに暴れにくい環境を作るか」が答えになる。ここがわかるとがんは付き合いやすくなる。毎月の血液データを見て、上がった下がったと一喜一憂する方は多いが、上がれば、「うちの息子はこういう状況で暴れるのだなぁよし、わかった。次回からは○○に変えてみよう。」という実験を繰り返せばいいのである。師匠は「治療日誌」をつけなさいとよく指導している。登山をしたら血液のデータが良くなったとか、宴会が続いたら駄目になったとか、健康食品を変えたら良かったとか・・・。師匠の言っていることも「身体にお伺いを立てる」と言うことである。できれば息子は不良でない方がいいが、不良になっちゃったら、親は腹を決める事である。